いま、卒業を目前にして何を考えるのか。研修科二年生に聞く、それぞれの三年間。#4 香川伊織、張 平、中原三桜里

2018年度研修科卒業発表会『ロミオとジュリエット』、いよいよ本番まであと3日となりました!稽古も大詰めとなり、会場となる文学座アトリエは緊張感と熱気で満ちています。さて、第4回目となる今回の2年生インタビューでは、香川伊織、張平、中原三桜里の3人にお答えいただきました!


喜田:みなさん本日はお集まりいただきありがとうございます。でははじめに、この研究所の三年間で、楽しかった思い出はなんでしょうか?


張:私は稽古場で芝居を見ている時は楽しかったなぁ。みんな演出家にダメをくらうとその直後は落ち込んだりもするけど、みんな次の日にはガラッと変わったりする。そういう変化の瞬間をみれるときは楽しい。

香川:公演が終わるごとに、みんなの距離感が近づいていくことを実感するから、やっぱり何と言っても一つの公演が終わった後の「打ち上げ」が楽しみ。特に本科時代の稽古後の呑みが楽しかった!

中原:わかる!私たちは夜間部だったから毎日のように呑みに行ってたしね。はっちゃけてた。笑
香川:うん。俺が夜間部に入った理由は「稽古後に酒が飲めるから」だし笑
張:私が夜間部にしたのは、ただ朝起きられないから。
全員:(大爆笑)
↑香川伊織

中原:私はキャスティングされる前の本読みが楽しい。キャスティング前は色んな人が色んな役を読むから「この人はこの役をこんな風に読むのか〜」と意外に思うことがある。そのことは役が決まってから後に、自分の役の参考になることもあるし。


喜田:それ、すごく分かります…ではこの研究所の三年間でどんな変化が自分の中にあったと感じていますか?


張:私はこの研究所にきて初めて、俳優も含め、みんなで一緒に舞台セットの仕込みやバラしをした。中国ではそういうことはしてこなかったけど、このお陰でチームワークが良くなったし、相手のことを考えるようになったと思う。中国では競争しかなかったから笑
それに仕込みでどれだけ疲れていても、その後に稽古する俳優の体力ってすごいなと思うし、体力的にも強くならないといけないなと思うようになった

香川:前に通っていた養成所は週に1回の稽古しかなかったけれど、文学座の本科の稽古は週に6回あるし、年に4回もの発表会がある。それは楽しくもあり、辛くもあるけれど、このおかげで「役者を仕事にする」という実感を持つようになったし、その体力もついたと思う。

中原:私も「役者を仕事とする」意識を持つようになったし、もっと自立して強くならないとと思うようになった。俳優として、自信過剰でも自信不足でもなく冷静に自分のできている部分、できていない部分を見極めることが大切だと思う。そういう意味で、この三年間で程よく自信がついたのかな。そしてその結果、言いたいことも言えるようになったと思う。

喜田:みなさんにとって三年間で最も影響を受けた作品は何ですか?


張:私は『ゴドーを待ちながら』(演出:鵜山仁)と『見よ、飛行機の高く飛べるを』(演出:松本祐子)かな。『ゴドーを待ちながら』では、稽古時間もなく、作品をあまり理解できないまま本番を迎えて、緊張感と不安とで初めて舞台の上でびびったなぁ。でもそんな状態のとき、演出の鵜山さんに「緊張してる状態の張をみたかった」と言われたの。それで、確かに芝居をするうえで、もっと緊張感がないとだめだなって思った
『見よ、飛行機の高く飛べるを』では、初めて日本語の方言(関西弁)を使う役をやったおかげで、日本語に対しさらなる自信がついたなと思う。

(『見よ、飛行機の高く飛べるを』撮影:宮川舞子)

香川:やっぱり『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』(演出:小林勝也)だね。勝也さんは本当に見逃してくれない人。俺は「セリフをこねくり回さず普通に喋れ」とか、他にももう何もできなくなってしまうくらい色々言われた。今でもまだふと頭の中に勝也さんの声が聞こえてくるもん笑。でもある意味このおかげで、セリフをまっすぐに喋ることを今でも意識するようになった

中原:『ペンテコスト』(演出:松本祐子)は東欧が舞台で設定も難しくて、たくさん勉強したけどやっぱり分かりきれないことも多かった。それで、俳優の仕事はわかってないことを、わかったような顔をして喋らなきゃいけない仕事だなと痛感した。あと、この作品では出番も多くて、とにかく目の前のことに必死で逆に変な力が入らなかったから、舞台上で余計な力を抜くってことがちょっと分かった気がする

(『ペンテコスト』撮影:宮川舞子)


喜田:では、みなさんはこれからどんな役者になりたいと考えていますか?


張:役者は色んな役をやっていく存在で、一人ひとりに苦手とする役があるはず。それをどうやって乗り越えていくかだなって。そして「この役はピンちゃん(張)にしかできない!」と思ってもらえる役者になりたい。上手い下手ではなく、俳優それぞれの個性や味や人生があるのだから、私は私の心のままに、オンリーワンの俳優になりたい

香川:もともと役者という仕事を初めて意識したきっかけが渥美清さんだった。小学生のとき、渥美清さんが亡くなってテレビでドラマバージョンの『男はつらいよ』の再放送がやってたの。ドラマだと最終回でで寅さんが死んじゃうのよ。それを見て「寅さんが死んじゃった…」って号泣しちゃって笑 子供心に、フィクションをここまでリアルに見せる役者というものが凄い存在に見えたし、自分もその領域に行きたいと思っている。
(『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』 撮影:宮川舞子)


中原:私はエンタメ劇であれ、会話劇であれ、どんな形でも色んな演劇に対応できる役者になりたい。そのために、形だけじゃなくて心で芝居をする役者になって、観た人に「感動した」と言ってもらえるお芝居に出たい

喜田:今回の卒業発表会『ロミオとジュリエット』への意気込みをお聞かせください。


張:とにかく悔いがないように魂込めて精一杯やりたい。もともと私が今回演じる大公という役は、普通ならおじいちゃんがやるような役で、まさか自分がなるとは思わなかったけれど、やるからには「大公はピンちゃんしかいない!」とみなさんに思っていただけるよう頑張ります。おじいちゃんたちに負けない!笑

↑張 平


香川:周りのために芝居ができるようになりたい!人のために愛を持ってできたらなと思う

中原:私は今回の稽古は途中参加で、二役演じる上にアクションもあるし、自分にとって凄い挑戦だと思うけれど、とにかく悔いを残さないように最後までずっと突き詰め続けて頑張りたい


喜田:では最後に、われわれ一年生に向けて一言メッセージをお願いします。


張:ここを卒業したら、一年に4回も公演ができる機会なんてそうそうないのだから、とにかくあと一年、楽しむことが第一!疲れることも喧嘩することもあると思うけど、逃げずに堂々と困難と向き合って戦い続けるべきだと思う

香川:どんどん人と関わって欲しいと思う。本気で人と関わって信頼を持つことで、それが芝居にも良い結果をもたらすはず。

張:信頼がないと「どうでもいいや」ってなっちゃうもんね。でもそれじゃ、一緒にお芝居をつくっていると違和感で気持ち悪くなってきちゃう。
香川:そう、そうだと思う。

 中原:とにかくここでの三年間は「頑張る時期」だと思うし、その努力はやればやっただけ返ってくる。周りに同期もたくさんいるし、これ以上ない環境を、あと一年もっと充実させていくのは自分たちだと思うから、頑張ってほしい!


喜田:みなさん、どうもありがとうございました!


インタビュアー:喜田裕也

文・構成:小谷俊輔

編集:平体まひろ


今回お話を伺った56期生のみなさんが出演する

文学座附属演劇研究所研修科

卒業発表会『ロミオとジュリエット』

は、1月25日(金)~27日(日)、文学座アトリエ

にて上演されます。

チケットは全ステージ予約完売となりました。たくさんのご予約ありがとうございました!

なお、当日券の販売予定はございません。ご了承ください。

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