皆様こんにちは。
研修科2年池亀瑠真です。
2020年7月28日(火)~8月2日(日)に劇団関係者のみが見守る中、研修科第一回発表会が行われました。
当初、公演映像を皆様にお届けする予定でしたが、
諸事情により配信を見送る運びとなりました。
諸事情により配信を見送る運びとなりました。
楽しみにしてくださっていた皆さまにはご迷惑をおかけ致します。
大変申し訳ございません。
予防策として換気、消毒、体調管理を徹底し、マスクを着けながらの稽古。
今までと違う環境に戸惑いながらも研修科一同、自粛期間の鬱憤を晴らすかの如く、みんなで作品を作る喜びに溢れていました。
今回は、『村で一番の栗の木』『秋の対話』『かへらじと 日本移動演劇連盟のために (以下、『かへらじと』)』の演出の鵜山仁さんと共に、演出補助として私達を支えてくださった生田みゆきさんにお話を伺いました。
それではインタビュースタートです!
(演出補助・生田みゆき)
① 岸田戯曲と鵜山仁
―まずはじめに、岸田國士さんの戯曲の魅力を教えてください。
生田:岸田戯曲の魅力は正直わかっていないというか……。
鵜山さん曰く、“岸田は多角的に色々な作品をとりあげたほうが実像がつかみやすい“と。
アトリエ70周年の岸田フェスティバルの自主企画で、私は「チロルの秋」を演出する予定で、どうやろうかなと思っていた時に観たのが鵜山さん演出のリーディング紙風船。
それがめちゃくちゃ面白くて。
自分が岸田作品の面白さに気づけていないのは読めていない、扱いきれていないからだなと思った。
正直、こうしたら絶対面白くなるという感覚はまだつかめていないけれど、鵜山さんがいる現場にいれば面白いことが出てくるんだろうなと思ってここにいます。
―ありがとうございます。
三作品の一つ、「かへらじと」は生田さんが推薦したとお聞きしたのですが、その意図を教えてください。
生田:岸田フェスティバルで何本も作品を取り上げるとなった時、岸田國士さん並びに文学座がどう戦争と関わったかを扱わないと岸田國士の全貌を見るには片手落ちじゃないかなという感覚があったんですよね。
それはナチスにワーグナーがいっぱい利用されたりと、”戦争と芸術”は切っても切れないところがあると思ったから。
岸田國士は大政翼賛会の部長になって、見方によっては戦争を推進している立場だった人。そんな人が作った劇団にいるのにそういう問題を扱わないのは単純に良くないと思った。
それで鵜山さんに「"かへらじと"をやった方がいいと思うんです。」と言ったら、「登場人物が多いから、じゃあ僕が研修科でやります」と。(笑)
―生田さんは 『円生と志ん生』(17年)『日の浦姫物語』(19年)など、鵜山さんの演出助手として何度かタッグを組まれていますが、生田さんから見た鵜山仁演出の魅力を教えてください。
生田:ジャンプの仕方がユニーク!
―ジャンプ…ですか?
生田:解釈等をうかがっていると…
「そうとるの!?」ということあるじゃないですか。
ー(激しく頷くインタビュアー達)
生田:でもちゃんと根拠があるし、言われてみればそうもとれなくないかなぁ…というところがあるよね。
でも一方でスケールは大きいし、結構ロマンチストだし。(笑)
宇宙とか好きなんだよね、鵜山さん。
100年単位とか1000年単位で物事を考えるとか、そういうスケールの大きさは、特に感じますね。
ーありがとうございます。
② 研修科について
―次に、研修科生についてお聞きします。
それぞれ、期によって芝居の質が違うなど、感じることはありますか?
生田:あんまり……。私が鈍感なだけかな?
ただの推測だけど昔、*上村聡史さんが「本科の卒業公演の演出家の傾向がその後の役者の傾向につながっているんじゃないか」と言ってた。
でも実際私は、本科の卒業公演で演出だった髙瀬久男さんが1番根本になっている感覚があるから、その説案外正しいような気もしますね。(笑)
―そうなんですね。
稽古を見ていて研修科生に感じたことがあれば教えてください。
生田:研修科生ね、あまりがっついてこないなという感じはあるかな。
でもそれは、今の時期が特殊だっていう感覚もあって。
いつ演劇が普通の状態に戻るかわからない状況で、芝居を辞めたいって人も出るだろうなって思ったの。
でも、若い時期ってすごく大事で、もちろん年を取ってからいい味が出てくる役もあるけれど、若さを活かせる役は結構少ないし、その役がキャスティングされる時期もすごい短い。そういう大事な時期を、私達はウィズコロナの時代でやっていかないといけない。
チャンスも少なくなっているこの時期に、この職業を目指すのであったら、自分も含め相当がんばらないと厳しいと思う。
逆にそこにがんばるモチベーションがないのであればやめたほうが楽な気がするっていうか。
今、結構大変だと思うんですよね。だから研修科と思わずがんがんやって欲しいです。
*上村聡史……2001年文学座附属演劇研究所入所。18年に文学座を退所。文学座での主な演出作品は、『弁明』(16年)『冒した者』(17年)など。
③ これから
―コロナ禍という現在、社会において演劇は必要だと思いますか?
生田:日常だとわざわざ突っかかって考えない所を、演劇だと一個一個考えるでしょ?
そういうことが普段も結構大事だと思っていて、人のちょっとした言葉とか佇まいからどれだけ想像力を持てるかが、人と繋がるエネルギーに直接変換されている感じがする。
自分が知らない部分をどう想像して補い、相手と繋がることができるかというのは今のグローバル社会を生きる知恵に繋がると思うし、子供がままごとで世界を学ぶことを誰も不要だと思わないなら、演劇はやっぱり社会に必要だし、自分の人生だけでは体験できないだろう世界を体験できる機会があることは幸せなことですよね。
―今後、動画で舞台の様子を配信する無観客配信や、オンラインの芝居が市場を占める、普及する可能性はあると思いますか?
生田:あると思うし、やった方がいいと思う。
代わりにはならないと思うけど、単純にそういうところで収入を補っていかないと、興行として成り立たないっていうことももちろんあるよね。
―オンライン配信は劇場で行う公演の代わりにはならない……?
生田:やっぱり演劇は、舞台をお客さんと共有するところが醍醐味だと思っていたから、家で映像だけ見ていてもちょっと緊張感がなくなるというか。
でも自粛期間中に観た、「12人の優しい日本人」のライブ配信は芝居と同時に観ている人達のコメントが流れていて、久しぶりに誰かと一緒に演劇を観た感覚になって楽しかった。
だからやりようなのかなぁとも思う。
一緒の空気をどう体感できるかというところですね。
―ありがとうございました。
インタビュー:研修科メディア係
テープ起こし:柏亜由実・山岡隆之介
記事構成:池亀瑠真
写真:池亀瑠真
※このインタビューは6月27日に行いました。
※この記事はインタビューを元に再編成したものです。
『村で一番の栗の木』『秋の対話』『かへらじと 日本移動演劇連盟のために』舞台写真はこちら↓
■研修科卒業発表会■
『萩家の三姉妹』
作:永井 愛 演出:松本祐子
日程:2021年1月21日(木)~24日(日) 予定
場所:文学座アトリエ
◆発表会における新型コロナウイルス感染予防対策について◆
発表会実施にあたり、政府や東京都の方針を踏まえた新型コロナウイルス感染予防、拡大防止への対応策として、客席数を大幅に制限することとなりました。
また研究所の発表会やカリキュラムにおいて研究生の安全と実習機会の確保を考慮した結果、事態の収束が見込まれるまでは発表会の一般予約を受け付けず、関係者のみの対応とさせていただきます。何卒ご了承ください。再び皆様にご来場いただける日まで、感染予防対策を続けてまいります。 今後の状況次第では変更、中止を余儀なくされる可能性もございます。
研究所発表会を楽しみにされていた皆様には改めてお詫び申し上げます。
※文学座HPより
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