全4回に渡ってお届けしてきた2年生インタビューも今回が最後となりました!
卒業までの時間をどう感じ、過ごしているのか。そしてそれぞれが目指す役者像についても、聞かせていただきました!
最終回となる今回は、神原鈴夫を演じる瓦谷 龍之、池内徳次を演じる常深怜、萩若子を演じる中嶋真由佳(Aチーム)、北川莉那(Bチーム)にお話を伺ってきました!
それでは、どうぞ!
① 『萩家の三姉妹』について
___まず1つ目の質問です。今『萩家の三姉妹』の稽古がはじまって2週間ほどですが、自分の役のこと、作品について、今それぞれ感じていることを教えてほしいです。
まず、瓦谷 龍之さんお願いします!
瓦谷
関係ないことかもしれないんですが……
僕は永井愛さんのことをそこまで詳しく知ってるわけじゃないんですが、この作品は全体的に言葉遊びが多くて……韻踏んでるところがめっちゃあるんですよ!そこが面白い。
武雄さんのセリフで「我々もまた」と「破鍋に綴蓋」が音的にめっちゃ気持ちいいんですよ。
あとその流れのセリフでいうと、「あの離れで」と「〇〇とはかけ離れ」で、「離れ」でかけてたりとか。「一流」と「三流」とか。
あとは…ちょっと台本見ていいですか?
___一同笑い
北川
全然気づかなかった。
中嶋
確かに耳障りはいいよなぁ。
___瓦谷さんはラップ歴どれくらいなんですか?
瓦谷
4〜5年くらいですね。
___すごい!瓦谷さんならではの視点!
瓦谷
(台本を見て)あったあった!「不感症」と「反応」が「-an,-ou」で韻を踏んでて、その次の「感想より反論」でも連続で同じ韻で繋いでるんですよ。
自分のセリフでもあったりして、面白いなぁって。
今まで扱ってきた古典の作品とまた違う面白さがあるなって思いました。
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常深
一年生が少ないのは寂しいなって思う。
そもそも一本少ないから、1年生と仲良くできる機会もあんまりなかったし、卒公ももうちょっと出られたらなぁと思ったんだけど、まぁ仕方ないですよね。
それが寂しいなって、座組み的には思いました。
徳次は…これは『萩家の三姉妹』だけじゃないんですけど、“色んな人と絡み合って喋る役”をもらった数が圧倒的に少ないなって、自分的に思ってて。
『るつぼ』もいろんな人と喋れたから、そういう意味では新鮮さとはまたちゃうけど、『萩家の三姉妹』は鈴夫、若子、品子さん、た〜ちゃまとか、いろんな人と喋れてるから楽しいなっていうのはすごく感じる。
ずっと決まった相手と喋るのも、それはそれで関係を深めていくのが楽しいけど、なんか固まってきちゃうっていうのが俺的にはあるから、やっぱりいろんな人と喋れるのが楽しいかなって思います。
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北川
まず、携帯電話が登場して私達は嬉しくて仕方がないです(笑)
今までやってきたものと比べると圧倒的に時代も近いし舞台設定も日本だし、海外戯曲のセリフを喋る時特有のハードルがないから、読みやすいかと思いきや……
これは私にとってはなんですけど、『萩家の三姉妹』は結構ファンタジーだと思ってて。
というのも、私の家庭はあまり仲が良くなくて、家族でこんなに喋る事が本当に実感しづらいというか。
「こんなに兄弟姉妹喋らないし〜」と思ってしまう、その違和感がすごくあって。
だから個人的には”ファンタジーだな”って思ってやるようにしてます。でないとやりにくさが正直ある。
”現代劇でやりやすい”とかは全く無いですね。
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中嶋
『萩家の三姉妹』を松本祐子さん演出って聞いたときは、永井愛さんの作品が好きだからすっごく嬉しかった。
それでウキウキで本を読んでみたら、変な人ばっかり出てくるから「なんだこりゃ面白い!」って。
それに私が今まで演じてきたのは年上の役や頭のいい人の役が多かったので、ワコみたいなちゃらんぽらんな役は遊び甲斐があって楽しいです。
ただ、私はこんなに言葉が“今”なお芝居をしたことがなくて、最初本当に戸惑いました。
ナチュラルに喋れないというか、喋ってる気になっちゃうというか。『三人姉妹』に比べれば、随分うちらに近いはずなのに。
今の言葉になったからといって、今まで学んできたことが要らなくなったり変わったりするわけではなくて、やっぱり根本は一緒で基本は大切だなって思います。
いつも私の中で鵜澤秀行さんが「語尾語尾語尾ィ~~!!」って。(笑)
お芝居の中で登場人物たちがお互いに影響し合おうとしてるから、ちゃんとエネルギーをぶつけてあげないといけないなって思います。
(写真:瓦谷 龍之)
② 演劇との出会い、文学座との出会い
____次の質問なんですが、文学座を受けようと思ったきっかけ、役者を志したきっかけはなんでしょうか?
瓦谷
幼稚園の時に、お母さんに「戦隊モノのCMのオーディション受けてみいひんか?」って言われて、何にも考えずに受けて。
それには落ちたけど、テレビ事務所に入ることになったんですよ。テレビ事務所で週1回のレッスンを受けるようになって。
そこが家からめちゃめちゃ遠かったんですよ。車で2時間くらいかかるところで、レッスン時間も1〜2時間しかない。往復の時間の方が長くて、「なんかなぁ……」と思っていた時に、家の近くで演劇やってるところを見つけて。
そこは30分あったら着くし、4時間から5時間稽古やってるから、そっちに行くことになった。
長いときは朝の10時から夜の22時くらいまでできるところだったから、そこに行って舞台に切り替わっていきました。
小6くらいで文学座の方と共演することがあって。
鍛治直人さんと、松山愛佳さん(2019年3月退座)、細貝光司さんと共演させてもらって、再演の時は高橋正徳さんが演出だった。
鍛治さんに「18になって気が向いたら文学座来たら?」って言われたのを当時は特に気にせず……
高校を卒業する寸前になって、その時は日大の演劇学科に行こうと思ってた。
勉強は全然できひんかったけど、ただ謎の自信だけあった時期なんで「AO入試で実技だけならいけるやろ」って思ったら見事に落ちて。
「落ちたー!どうしようかなぁ」と思っていたときに鍛治さんの言葉を思い出して、受けてみて、ここに来たっていう流れです。
常深
俺は、専門学校に行ってて。2年生の最後に、色んな事務所に来てもらうオーディションがあったんだけど、声優の学校だったから声優事務所が多くて。
2年間の勉強の中で「からだ動かさずにこんだけしゃべんの無理や」って思ってたから、声優はイヤになってて。
専門学校の在学中に映像の仕事もたまにあって、映像は順撮りじゃないから「はい、じゃあ先このシーンやります」とか、「飛び飛びやん。うわ、やりにく!」ってなって。
「舞台は一本バンっていけるやん、舞台やりたいな〜」って思っとったら、専門学校の担任の先生から「じゃあお前ここ受けてみたら」って文学座の入所案内もらって、「こんなところあるんや」って思って。
文学座知らんかったけど、俺らの1期上に専門一緒だった春田玲緒さんがおって「去年春田さん行ったからいけるかも……」って。
それで受けてみたという感じです。何個か事務所に声掛けてもらったけど、「俺は文学座行きます」って言って蹴って(笑)
そして無事に受かったというお話でした!次行っちゃいましょう!(笑)
北川
私は高校演劇出身で、当初は演劇部に入るつもりはなかったんですけど、ひょんなことから入ることになりまして。
その時はずっと「やめたいやめたい」って言ってましたけど……
でも、なんだかんだ受験ギリギリまでやって、3年間舞台漬けのすごく贅沢な経験をさせてもらいました。
幸い頭はよかったですから、その後は普通の大学に行き、1年ただの大学生をやったんですよ。
サークルで遊んで、授業受けて、大学生を1年間やって、そしたら飽きてしまって……
本当に”楽しいこと”しかなくて。
高校で演劇やってた時は、イヤなことばっかりあったけど、それがないと私生きてられないのかもしれない、みたいな。
なんで演劇やりたいと思ったのか確固たる理由は全然分からなくて、ただただやりたいっていう気持ちがありました。
それで始動することにして、大学1年の終わりくらいに色々養成所調べてみて……調べると文学座一番上に出てくるじゃない?だから受けてみようと思って(笑)
最初はそんな流れでした。
中嶋
役者を志したキッカケは高校の時に見た後藤ひろひとさん作・G2さん演出の『人間風車』かな。DVDで見たんだけどバカおもろくて、あたしもこんなんやりてぇ…!って。
それから色んなジャンルの舞台を観劇するようになり、大学では同期が就活してるのを横目に劇団を主宰したり海外の劇団にインターンシップに行ったり色んな経験をして『舞台芸術』について学んで視野が広がりました。だから役者という道だけじゃないってことも重々承知だったんですけど、どうしても私は舞台で表現することにこだわりたくて女優の道に進むことに決めました。
文学座を受験したのは恩師の勧めです。関西から出たことがなかったので不安だったけど、台詞もちゃんと喋れずに一人前ですとは言えないなと一念発起しました。大都会東京で荒波に揉まれてこいと、送り出されました。
③ 研究所での三年間
___次の質問なんですが、本科からの3年間で1番印象に残ってることはなんですか?
常深
なんやろうなぁ。めちゃくちゃしょうもないことやけど……
研修科上がった時に、外薗海士さんに似てるって言われて、誕生日も一緒らしくて。
北川
そうなの??
常深
そう。何回か見たことがあって、なんとなく似てるかもな~とは思ってて。
今年はなかったけど、毎年夏に大掃除があって、俺がアトリエのトイレを掃除してた時、窓の向こう側に海士さんがおって……「鏡!?!?!?!?」って思ってん(笑)
__一同笑い
常深
さすがに対面したら違いわかるやろって思っとったけど、びっくりした。そんな似とる人がおったってことが印象的やんな(笑)
(写真:北川莉那)
北川
小林勝也さんの話とかどうかな?
___勝也さん!伝説がいっぱいあると聞いています。
北川
うちらは本科の卒業発表会が勝也さんで、野田秀樹さん(劇作・演出家)の『夏の夜の夢』をやったんだけど。
私達の同期に体が全然動かない人がいて、勝也さんに凄く怒られてて…
ある日、パイプイスを重ねて置いておくキャスターに箱馬を乗っけて、「お前は半身不随の設定にするからな、お前はこれに乗ってこい!」って言われて、その日はそれで終わったんですけど。
翌日の稽古で彼が律儀に自分でキャスターに箱馬乗っけて出てきたら、勝也さんが「いつまでそんなのに乗ってるんだ!!」って(笑)みんな爆笑です。
___それは初めて聞きました(笑)
瓦谷
僕が凄い印象的なのは……
本科の頃、同期に伝説のギタリストがいて、稽古が終わった後にその人と喫煙所に入って即興でギター弾いて、僕がラップを合わせるっていうのをちょくちょくやってて、そこで青春を味わってた。人見知りで、限られた友達の中で一緒に卒業の曲作った。
卒業してみんなでスタジオ入ってレコーディングして……それが印象に残ってる!
中嶋
私たちの代は座員さんと関わらせてもらう事が多かったからそれが結構記憶に残ってる。
子供フェスティバルの時に、子供達が取りやすいようにって楽屋で丁寧にお菓子を並べる坂口芳貞さんとか、『阿Q外傳』のバカ踊りの時に手拭いで竹を頭に角みたいに生やして暗闇で一人気合いを入れてる中村彰男さんとか、やたら女性の所作が上手い若松泰弘さんとか。そういうのを見て、役者って職人さんなんだなー、かっこいいなと心躍りました。私も自分の小道具を汚しながらニヤニヤする役者になりたいな(笑)
あと文学座本科を通った人は皆言うかもしれないけど、『女の一生』で鵜澤さんにどれだけしごかれて食らいついたことか!一生忘れないと思います。
瓦谷
僕は鵜澤さんが言ってる事を理解出来なかった。指導方法も厳しくて、正直に言うと古いやり方だと思ってしまった。
でもその時鵜澤さんに、「俺もいままで演出家に納得いった事無い」って言われて。「1カ月稽古して本番終えてみて、“やって良かった”と思える事もあるし、“違うな”と思う事もある、だから舞台終えてからどっちか答え出せば良い」って言ってたのを聞いて、確かにって思った!
___なるほど、大変な公演だったんですね!
(写真:中嶋真由佳)
④58期の"これから"
___これから先の人生でこういう役者になりたい、こんな作品を作りたいという目標はありますか?
瓦谷
コロナの時期だから演劇が変わっていくし、新しい物を作っていかないといけないって思うし…それをやっていくのは今の世代だとも思う。
俺はラップなり音楽なり、いろんな物を作ってく表現者になりたいと思ってます!
常深
俺はそんな先の事は考えてないけど…一番最初に言ったやつと関係してくるな。
前まではいろんな人と喋る役回りじゃなかったけど、今色んな人と喋って楽しいと思ってる。だから逆に、もう一回“この人とだけしゃべる関係性”の役をやったらどう感じるのかすごい興味があるから、そういう役をやりたいです。
北川
私は…全然話が変わっちゃうけど、最近高校生って本当にすごいって感じていて。
なんていうのかな、私たちみたいにプロを目指してるわけじゃないからこそのぶっ飛び具合というか。
オリジナルの演劇概念みたいなものが個々人にあるし、相手にセリフがかかってるかかってないとか、声つくってるつくってないとかも全然気にしてない。
私たちには想像できないような「そこでそんな動きする!?」ってこともたくさんあって。
それがエネルギーとか爆発力を産んでて、本当にすごい。思いがけない発想力みたいなものかな?本当に尊敬してる。
で、それをいい方向に流していくのが大人たちなんだなって、最近思ってて……
これからもずっと演劇に関わっていくって思うと、そういう導く側も自分に合ってるのかなって思ってきてる。
もしかしたら…いずれ俳優は辞めるかも……!(笑)
中嶋
引退宣言してるやん(笑)
___一同笑い
中嶋
私は自分が演技が上手とは1ミリも思ってなくて、でもお客さんの心にひとつでも痕を残せる役者になりたいなって思います。その為にも何歳になっても疑問を持ったり考えることをやめない役者でいたいです。
今後演じてみたいのは、ヘッダ、マクベス夫人、アマンダ、黒蜥蜴…夢はでっかく。でもマダムだらけだな。わがままで奔放な色っぽい女性を演じたいです。
(写真:常深怜)
⑤58期から59期へ
___最後の質問です。59期生に対して一言ずつ頂けたら!
北川
おーなるほど(笑)
常深
でた!
___ダメ出しでもなんでも、お願いします!
瓦谷
研究所主事の植田真介さんから、「今、この期には無いものを持ってる人を次の期ではとる」って話を聞いてたから、「へーどんな人が入ってくるんやろうな」って思ってたら、最初に集まった時驚いた。圧倒的に違くて。
57期は知識人、演劇を突き詰める人達。58期は逆に演劇から離れてるのばっかなんですよ。
あんまり演劇に執着しないというか、他にも手を伸ばしてたりとか、ちょっと引いてるマインドの人達で。
59期は目茶苦茶活力ある人達!演劇が好きなのが伝わってくるし、全力やし、凄い圧倒されてると思う。そのエネルギー見習わなくちゃな。
中嶋
私、研修科にあがって同期とお芝居した感じがしなくて。
『少女仮面』で北川とやったりはしたけど、あんまり同期とお芝居した感じしてなくて、今回卒公はどうなんるんだろう?って不安でした。やっぱり“みんな仲良し!”みたいな期では無くてさ、ほんとそれぞれで。
59期は私には刺激が強かった!なんかエネルギッシュで頭も柔らかそうやし、”自分はこうやる”っていうマインドをみんな持ってて凄い羨ましいと思う。
私らから一言は…要らんやろ?(笑)
北川
本当にそうですよ。”あなたたち!聞かないやろ!”と思う(笑)
なんか楽しみ!
常深
凄い華あるしね!
北川
本当それ思う!
常深
ホンマにみんな元気やし、みんな色んな人と喋るし、それこそ中嶋も言ってたけど58期は“個”やからさ、皆が。
59期来た時、めっちゃ喋りかけてくるやん!ずっと喋ってくるやんすげえなって。
意欲もあるし、集中してるし、凄い張り切ってやってるから。何もいう事は無くそのまま突き進んで下さい!
北川
私もみんなが言ってくれた事と同じで、
華があるしエネルギッシュだし、かつチームワークもあって、個人個人の能力が高くて凄いと思う。
59期は来年尊敬される先輩に自然になっていくんだろうなと思っています!
中嶋
___本日はありがとうございました。
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インタビュー:山田奈津子
写真:池亀瑠真
記事編成:柏亜由実
■研修科卒業発表会■
『萩家の三姉妹』
作:永井 愛 演出:松本祐子
日程:2021年1月21日(木)~24日(日)
場所:文学座アトリエ
2020年度研修科58期卒業発表会『萩家の三姉妹』は無事終演いたしました!
ありがとうございました!
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