卒業生インタビュー『三人姉妹』に向けて#3

今回は卒業発表会を間近に控えた研修科2年生(60期)のインタビュー第3弾です。

「アンドレイ(B)役、藤大道」「イリーナ(B)役、中川涼香」「オリガ(B)役、池田千歌」「クルイギン役、今野忠倫」にお話を伺いました。

左から藤大道中川涼香池田千歌今野忠倫


ーー三人姉妹の作品の印象、自分の役についてお聞きします。


今野

まだやってる途中だからわからないけど、やっぱ去年と違うところがところどころあって。だからそこは祐子さん高橋さんの視点、重要視しているところが違うんだろうなってところはやっぱりあるんだけど。

俺は去年も『三人姉妹』やったけど、いつかまたやりたいなって思っていたから、結果今年やれてよかったなっていうのと、俺、クルイギンもやりたかったから。いいよね、クルイギン。


ーークルイギンのどういうところが?


今野

クルイギンは一番共感出来たというか。すごい愛情表現はしてるけど相手にされない、みたいな。あー、いるよね、こういう人、みたいな。自分にそういう経験があったわけではないけど、あーでもいいなあ、みたいな。可哀想だな、みたいな(笑)


中川

私は、去年やる前に『三人姉妹』を読んだ時は、正直、全然わからなかったんです。たしかに色んな起伏は描かれてるけども、最終的にハッピーエンドになってるわけでもなく、みんな報われてない作品だなって……なんかモヤモヤが残るような作品で、これはなんなんだろうっていう疑問がすごいあって。

で、昨年の『三人姉妹』を高橋さんが立ち上げていく中で、「あ、この作品は立体化しないと内容がわからない。戯曲だからこそ、文面だとわからないけど、立ち上げると内容が色々わかっていく。戯曲としてすごい完成度の高い作品だったんだな」っていうのを感じました。

去年は色々周りのことをやっていってという感じの役だったんですけど、先輩たちがやっているのを見て、「ああこういうことか」っていう新しい発見がいっぱいあって、去年を経てから『三人姉妹』ってすごい面白い作品なんだなって感じるようになりましたね。


ーー今回の自分の役についてはどうですか?


中川

イリーナっていう役は、すっごい純粋な女の子で、しかも周りの事象にすごい敏感で……明るい女の子ではあるけれども、やっぱり周りに影響を受けていく、それで自分自身を見つけていってるっていう、その過程がよく分かるキャラクターだなと感じました。

一幕では働きたいってなるけど、周りの色んな事象に影響されて自分自身がわからなくなるっていう段階まで行ってしまうっていうのは、すごい演劇的というか、人間らしさっていうのかな、それをすごい感じる女の子で。

まあまだ、立ち上げの段階なので、全然、イリーナのこと、全部は知ることが出来ていない状態ではあるんですけど、これからこの子とちゃんと向き合っていかないといけないんだなって責任を感じています。


中川涼香

うーんでも俺は、1回全部読んでみて、結局わかんないなって。

でもそれこそイリーナの、働きたいって思って、実際働いてから現実は違ったっていうのは今の僕たちにも感じるところは全然あると思うし、『三人姉妹』の終わった後もロシア革命が起こってっていうのを考えると、大変な時代に生きてんだなって思う。乱世で。


ーー 目まぐるしく変わる時代ですよね。


去年観た時はね正直あんま細かくわかんなかったけど、今回本読んで、ちょっとずつわかってきたんだけど……いるよね、っていう(笑)

すごい身近に感じるし、俺がやってるアンドレイもすごいやりやすいっていうか、年齢も近いし、経験してることもなんとなくわかるし……アンドレイはたぶん、二幕三幕ぐらいで人生って大したことないんだなって気づいた上でぼーっと生きてると思うんだけど、ぼーっとっていうか、”いる”と思うんだけど、それは感じるよね。


ーー19世紀に書かれた本なのにすごいですよね。チェーホフの作品とかってなんか……


なんかね、愛着あるよね。キャラクター愛せるし。 あと、貴族出だけどさ、田舎感もあるじゃん。田舎の人間感。より親近感湧くかな、俺は。


ーーアンドレイ自身についてはどうですか?「人生って大したことないんだな」とも言ってましたけども。


家に引きこもってた人間が恋をしてしまったというか。


一同

(笑)


だから、恋をしてこなかった人間が本気で恋をしたら人生急に変わっちゃって……気づいたら奈落の底にいる、みたいな。年齢を追うごとの恋愛をしてこなかった人間だと思うから。いきなりジャンプしやがったか、みたいな。そしたら落ちて骨折してる、みたいな。マジかよって思う(笑)


一同

(笑)


でも俺はアンドレイの台詞とかは、喋りやすいかな。『三人姉妹』の台詞は言いやすい感じはあるかな。今まで研修科とかでこういう芝居したことないよね。声もほとんど大きくしなくていいし。動きも演劇的なところもあるけど、より自分たちの生活に寄せるところとかもあるし。その中でどこを強調したいのかっていうのは卒業公演としてとてもいいんじゃないかな。

(手前:藤大道、奥:今野忠倫

池田

私は最初に台本を読んだ時はやりやすいとは全然思えなくて。一人一人が喋る量が長くて、同じようなことを何回も言うし...でもやってみると意外とすっと入ってくるというか。


やるとね、やると全然違う。相手のセリフ、相手のここの反応で、こう喋るんだとかいうことがすごいわかる。


池田

 そう、すごいわかりやすいなって思って。今までやった作品の中でも一番すっと入って来やすい感じはするかもしれない。


ーー役についてはどうですか?


池田

オリガは教師をしてるけど、その割にはなんかちょっと抜けてるじゃないけど、そういうところがあって。でも結婚に対して「義務を果たすため」とか言うように結婚に対する意志が一番強くて、だけど優しいからこそ仕事を続けて家庭を支えなきゃとか……


ーー自分を犠牲にしてますよね。


池田

そう、愛情深いからこそ全部裏目に出ちゃって......一番報われない人間だなと思っちゃう。


ーー二つ目の質問です。演劇、文学座との出会いについてお伺いしたいと思います。


中川

元々姉がアニメ好きということもあって私もアニメが大好きだったので、最初は声優さんになりたいと思ってたんです。でも高校生の時だったので「部活どうしようかな」と思った時に、演劇部があったので、一旦そこに入ってお芝居やってみようみたいな軽い気持ちで入ったら、みんなで一つのことをやっていくっていうのがすごく楽しくて。

その後、進路の時期になってどうしようかと悩んだ時に声優になりたかったので、声優の専門学校に入って2年間学ぼうと思い声優の専門学校に入って2年間アニメの勉強をしていた中で、色々な演劇を観に行く機会が増えてきて。

で、そこで観に行った時に「この演出家さんと仕事がしたい」「この俳優さんとお仕事したい」と思える人達に出会えて、そこから仕事として芝居をやるっていうことに対する漠然としていたものがちょっとずつ確立されていった感じです。

専門学校ではアニメのことを主にやっていたんですけど、一個だけ、夏に2ヶ月くらいかけてみんなで一緒に芝居を作る短期ゼミのようなものがあって、それに参加した時に、そこの講師の方が「お前は文学座に行け」と言って下さって。でもその時はまだ文学座の芝居を観たことがなかったんですよ。だから、「行くにしても何か観ないといけない!」と思って、その時に松本裕子さん演出の『一銭陶貨〜七億分の一の奇跡〜』をサザンシアターに観に行ったんです。そしたらすごく胸が締め付けられるというか、肉体的にすごい疲れたけど、観た後ずっとその世界にいる感覚みたいになって「文学座って本当にすごい劇団なんだ」と思って、文学座に入ることを決意して、受験して…...っていう流れです。


ーー藤さんはどうですか。


俺ね〜、端的にいうと中学時代は正直めちゃくちゃヤンチャしてて、でも、高校時代は全く違くて、本当に一言も喋らない、笑わないような人間だったの。それでそんな中、映画観てたらお母さんに「エキストラ行ってみたら」って言われて、行ったんだけど、その時に「よーい、スタート」って監督か誰かが言ったら、みんな眉間に皺寄せてマジになって、「はいカット!」って言ったら「ゔぁ〜」って気の抜けた声出して(笑)

これのなにが面白いのかなぁって思ったのがきっかけかな。

それから、あいつら何がしたいんだって思いながら時が経って、変な養成所とかにも半年くらい行ったんだけど、あんまり合わなくて行ってなかった時に、「でも演技もうちょっと上手くなりたいな。あいつらみたいになりたくないな」って。そしたら変な事務所入るより劇団の方がいいのかなって思って調べたら文学座が出てきたから「じゃあここでいいや」って。

俺は芝居観たことなかったし、興味も持ちたくなかったし。それこそね、俺どんくらいまで芝居出来るんだろうって、俺どんくらいなんだろうと思って受けたら受かったみたいな感じだから、別にめちゃくちゃ受かりたいと思ってなかった。

でも受けて良かったなとは思う…...うん。人として成長した気がするし。


中川

最初の印象と違う(笑)


今野

いや本当に。夜間部の時はもう全然違うから。マジで喋ったことなかった。稽古終わったら速攻帰ってて、大道って存在がもう怪しかった(笑)

『わが町』の時にぴょんぴょん跳ねてたってイメージしかない。


こいつらと仲良くしてもしょうがないと思ってた(笑)


一同

(笑)


池田

私は母がミュージカルをやっていて、幼い頃に有名なミュージカルを観に行ったりしたから、もう「お母さんがやってる」っていうイメージだった。それでずっとお芝居、私は特にストレートプレイをやりたいと思っていたから、1年間みっちり学べるところを探して、そしたら「ぴったりのとこあるじゃん!」って(笑)

週6でほぼ毎日、しかも4本も発表会をやれる、こんなみっちり学べる場は無いよね。それで受けた…っていう感じです。


ーーありがとうございます。では最後に忠倫さん、お願いします。


今野

俺はまず普通に大学に行ったのよ。で、保育士の資格を取った。で、大学卒業する時に、俺もアニメが好きだったから声優とかやりたいなぁって思ってたんだけど、出身も田舎だし、大学も仙台だったから、東京まで出るなのがもう結構デカくて、どうしようかなって思ってた。


それって何年?


今野

2014年とかかな。


震災の時いたの?岩手。


今野

いたいた。俺大船渡市っていうところだったから。津波も来てた。

で、保育士になって一年半くらい働いていたんだけど、本当にきつくて。給料が安いし、すごく忙しいんだよね保育士って。だからやってる人たちすごいなって思うんだけど。で、これを死ぬまで続けていくのかって考えたら、ちょっと無理だなと思って。で、どうしようかなって時に、「ここで一年半でや保育士やめて周りからやんややんや言われるんだったら、もう自分のやりたいことやろう。じゃあ声優になりたいな」と思って。

まず東京来て養成所に入って、そこで2年くらいやって、でも週一でしかレッスンがないから、ちょっとここでこのまま続けててもしょうがないなと思って、そしたら、そことは別の場所で滑舌とかナレーションを教えてくれる先生がいたんだけど、その人に「文学座っていうところがあって、ワークショップがあるから行ってみたら?」って言われて西川さんのワークショップに行ったんだよ。そしたら、「セリフを感情込めてこう言うんだよ!」じゃなくて、「ここを上げる」とか、「ここはこう言うことを言いたいから、ここの単語をちゃんと立たせる」とか、「立たせるっていうのは、こういうパターンもあるし、こういうパターンもあるし」みたいな論理的なことをちゃんと教えてくれて、「これすげえな。これを、週6で毎日勉強出来るんだったら、ここだったらいいなぁ」と思って。で文学座受けて受かった、みたいな感じ。


良い環境だよね!


今野

すごく良いところだと思う…...そんなに高くも無いしね!


一同

(笑)


池田

コスパが一番良いと思う!


ーー3年間の思い出とか印象に残ったことはありますか?


今野

その質問、本科の時から何言うか決めてた。


まじ⁉︎聞きたい!


今野

俺、本科の時の『わが町』の2幕の結婚式の場面で余興やったのよ。


一同

あーーー!!!!!


今野

そう(笑)

彰男さんにね、俺と水野の2人だけちょっと年齢が上だったから、「お兄ちゃんたちが結婚式の披露宴の余興ではしゃいでるみたいな感じだからやめて」って言われたの。

野球のユニフォームだったし、他の人に比べておっさんが滑ってるみたいに見えたんだね。


池田

草野球感がね(笑)


「牧歌的にやって」ってね(笑)


今野

そうそう、言われた。それで「牧歌的ってなんだろう?」ってネットで調べたりとかした(笑)


ーー社会人感が出ちゃったんですね(笑)


今野

全部こっちに任せられたのよ。彰男さんに「そっちで決めて」って。

それこそ『わが町』の時は、ちょうどコロナが流行り始めた時だったから、なかなかみんなで集まれなかったから、LINEグループのビデオ通話で話して……


あーー!!!やったね(笑)


中川

やったやった!懐かしい!


今野

で、色々決まって、これで行こうってなったのよ。そしたら最初「まぁこれで続けてみて」って泳がされたのよ。でも途中から「全然面白くない。まず歌がダメ!変えて!」って言われて、「え、でも、最初これで続けてみて」って言われたけどなって思って(笑)

その後、歌を変えたり、色々試して、最終的には彰男さんからも「ここ数年で一番良かった」って言ってもらえて、それは嬉しかった。けどその時に、「もし研修科残ってこの3年間の思い出聞かれたらこれ絶対言おう」って決めてた。だって注意されるの演技の事じゃないんかいって思ったんだもん!

でもね最近になって、自分の年齢とか見た目とかをちゃんと客観的に見れた状態で演技をできるようにならないといけないって思う。他の人がやってOKなことでも自分がやってダメなことってあるじゃん。彰男さんに言われたことってそういうことなんだなって凄く勉強になった。逆に自分がやって正解なこととかだってあるし。そういうのって当たり前なんだけどさ。


ーーありがとうございます。


今野忠倫

池田

私はなんだろうな……全部印象に残ってるんだけど、1番苦しかったのは『俳優についての逆説』かな(笑)

私、やりたいって希望出してないのに俳優17やることになって、やりたくなかった(笑)で、もう一人俳優17をやった人も希望出してなくて。


中川

やりたくない人から選ばれたんだ(笑)


池田

で、やらされ……いや、やることになって(笑)

他の舞台って絶対に相手がいるけど、『逆説』は全部自分でやらないとだから、練習にも広い場所が必要なのに、夜間部の皆んな21時半とかに稽古終わっても残って自主稽古してるじゃない?で、22時には稽古場閉まっちゃうからその後残って稽古することもできないし、稽古前に早く来ても、絶対水野とかいるし(笑)


今野

あいつ迷惑だなー(笑)


3年間ずっといるからね(笑)


池田

そうそう、早く来てもできない(笑)だから私レンタルスペース借りた。


今野

水野のせいで(笑)


これ絶対インタビューに載っけよう!!(笑)


池田

そう、だからレンタルスペース借りてやってた。

で、ずっと自分との会話で、ずっと緊張してて、今もなんだけど(笑)

本科の時はもっと緊張しいだったから、『わが町』の時もゲネで一瞬台詞飛ばすぐらい緊張しいで……俳優17は相手がいないから自分が飛ばしたら終わりじゃない?だからそのことを考えるともっともっと緊張しちゃって、体もボロボロになるぐらいまでやってて。


中川

痣だらけだったもんね。


池田

だから全身痛いみたいな感じで最後本番やって、植田さんに「最後に燃え尽きないでね」って言われて、そんなふうに見えてたんだって思って。

本当に満身創痍、すっごいきつかった。っていう思い出がある。

池田千歌

水野のせいで(笑)


今野

レンタルスペース(笑)


池田

稽古開始18時なのに、15時半に来たら、もう水野いたからね(笑)


そう!で、弁当食ってるの(笑)

で、「それどうしたの」って聞いたら、「職場からもらった」って(笑)


ーー大道さんはどうですか?


なんかあるかな……それこそ稽古終わりに残って稽古したことは結構覚えてるかな。


ーーそれはどの時代ですか?


本科、研修科、両方かな。それこそ本科のいつかは覚えてないけど、山本ビルで稽古が終わった後、みんなが帰った後に水野と二人で「なんか物足りないね」って話してて、腹減ったなって一緒に弁当を食べるようになった(笑)


今野

最年少と最年長がね(笑)


そう。2人で弁当食って、「あー、帰るか」って。結局稽古しないで(笑)


池田

みんな水野大好きじゃん(笑)全部水野に関しての話(笑)


一同

(笑)


中川

私も水野の話しなくちゃいけない(笑)


ーーマストじゃないですよ(笑)


中川

はい(笑)

なんだろうな……『わが町』で彰男さんが演出して下さって、その時に「その場にいればいいんだよ」って言われて、「その場にいるってなんだ?」って最初は思ったけど、今はそれが役者として一番の課題だし、毎公演「その場にいよう、いよう」を念頭に置いて芝居作っているから、この3年間で一番印象に残ってることは彰男さんのその言葉かなって思ってる。

『わが町』でそれをずっと言われてたから、みんなそれをずっと気にしてて、台詞とかもその場にいないと相手にかからないから、私がジョークローエルで、水野がギブスやってて、毎日のように「今日台詞ちゃんとかかってたかな」ってうちに聞いてくる(笑)

2人とも初の会話だからぎこちないっちゃぎこちないんだけど、毎回毎回確認してくるからそれが面白くてよく覚えてる。『わが町』の稽古が1番覚えてるかもしれない。


楽しかった(笑)


中川

そう!すごい楽しかった!


俺、演出って存在も知らなかったからさ。

まず「知らないおっちゃんがなんか見てんな」って思ってて、「色々言ってくるけどまぁいいや」って感じでやってた(笑)

でも、すごい面白かった!


中川

それまでは「この台詞はこの感情で……」って感じで作ってたから、それを抜きにして、相手の役とやればいいんだ。その場にいればいいんだ。っていうのを初めて実感できたからこそすごい楽しかった、役も自分に近かったし。芝居っていうよりは遊んだなっていう感覚がすごい残ってる。だから『わが町』が一番思い出に残ってるかな!

あとアクションの授業でマスクをつけながらするのが本当にきつかった(笑)


一同

確かに(笑)


中川

みんな過呼吸になりながらアクションしてた。それがコロナ禍に入っての一番の弊害かな、それも記憶に残ってる!


池田

私たちの代はコロナが始まった年に文学座の本科に入ったもんね。


中川

そう。コロナ禍で入ったからこその苦労が所々あったね。


ーー4つ目の質問です。将来の目標について教えてください。

 

俺はハゲて……

 

一同

え!?

 

で、しわくちゃになって、腹が出て…っていう普通のじいちゃんになりたいかな。芝居というより人として。

「今の若い人たちはおとなしい」とかよく言われるし、それこそ祐子さんも言うし、なんかそれが悔しいんだけど、そうなっている自分もよくわかってるし、みたいな中で、変に流行に乗っかりたくないし。だから、自分が今どこにいるのかっていうのをしっかり理解した上で、「どこに行こうか」っていうのを自分の足で見つけられる人になりたいかな。だから、今の生活してたらたぶんそんなこと出来ないだろうから。

俺さ、世の中の人の役に立ちたくないんだよね(笑)

だってさ、電車とか乗ってて、こいつらのためにやるのかと思うと嫌になってくる(笑)

俺は、例えば俺が大人になってどっかで働いたとしたら、自分が住んでいる近所の人たちのために“ちょっと”何か出来るような人間になりたい。世の中の役に立つ気はない!!!!!!!!!!

 

一同

(笑)

 

中川

ひねくれてるなあ(笑)

 

今野

文字にすると凄いことになりそう(笑)

 

!マーク10個くらいつけて!

 

池田

私も、すずちゃん(中川涼香)がさっき言ってた「いればいいんだよ」がすごい印象に残ってて、だから役者を続けていくとしたら、「そこに存在してるなあ」っていう役者になりたい。この人芝居してるなあって思われたくなくて、リアルでありたい。

人としては……私はあんまり前に出たくないから、しれっと隅で生きていたい(笑)

 

一同

(笑)

 

池田

それこそ芝居でも中心の役よりは隅にいる役やりたくて。隅にちゃんと存在している人間になるのが一番の目標。

 

勝也さんのようになりたいってこと?

 

池田

勝也さんは本当にすごいよね。存在感というか。

 

彫刻になっちゃうからね、一瞬で(笑)


今野

俺はね、売れたい!もう売れたい!まず芝居で飯をある程度食えるようになって、ちゃんと求められる存在になりたい。名前はちゃんとみんなに知られるようになりたいし、その上で芝居を続けていけるように……うーん、逆かな?芝居を続けているから名前が売れているのかな?ちょっと分からないけど。

だから死ぬまでちゃんと芝居で飯を食い続けていられるってことは、ある程度ちゃんと世間一般に名前が知られてるっていうことだと俺は思ってるから、そうなるために今俺が出来ることは芝居が上手くなることって考えてるから、とにかく芝居の勉強をするっていう感じかな。

 

ーー人としての目標は何かありますか?

 

今野

人として……ちょっと似てるかもしれないけど、やっぱりそれこそ自分がある意味商品だからさ、自分が売れればその分だけ自分が今いるところに還元は出来るわけじゃん。

例えばこれからもし文学座の座員になれたとして、自分が売れたらその分だけ潤っていくわけだから、その結果、周りに良い影響を与えるっていうのもそうだし、でもやっぱり自分がいるところは良い環境にしていきたいっていうのはあるから、自分が出来る範囲で貢献できたらいいなって思うよね。


中川

人生の目標としては、さっき言った演出家さんと一緒にお仕事がしたいっていうのが一つあって、役者として続けていく上では、やっぱり舞台上に存在できる、そういう役者になりたいなって思っていますね。今生きるのが精一杯ってところが結構あって、将来を考えるっていうのはまだ……

人としては、周りの人を思いやれるような人間になりたいなってすごい思います。研修科に上がると、外のお仕事をするっていうのも色々増えてくると思うんですけど、そういうところで「芝居だけじゃ生きていけないなこの世界」って思いやりを大事に感じるからこそ、やっぱり他人に興味を持って他の人を思いやる、気遣いがナチュラルに出来る、そういう人になりたいなって思います。

 

ーー最後に61期生にメッセージをお願いしたいと思います。

 

まずは、卒業公演のために動いてくれて、それこそ今とかさ、本当ありがたいなあって思うし、プロンプやってくれたりとかさ、まずそこは感謝ですね。多分これも文字起こししてくれるだろうし(笑)

 

今野

ずるいなあ(笑)

 

去年やったからさ!ありがたいなあと思う。

あとは、研修科上がるとそれこそオーディションが来たりとか、いろいろ話があって外部に出ることがいいみたいに思われがちだと思うんだけど、俺はそれより4本出ることの方がすごいことなんじゃないかなって思ってるから、焦らず騒ぎもせずじっと我慢してって感じかな。頑張ってくれ、みたいな。

 

今野

研修科1年生に対する感謝は述べられちゃったので、それは省いたとして。

俺は4本全部出た派の人間だから、1年生の頃から考えると、1本目は出させてもらえなくて2、3、4本、2年生に上がって1、2、3、4本で計7本、出ていいよって言われたやつには全部出てるから、外部に出たことがない。

もちろん外部に出る経験値とかもたぶんあるとは思うんだけど、さっき大道も言ったみたいに、せっかく研修科に上がっても、お金の問題とかでどうしても何本か休むみたいな子もいるだろうし、コンスタントに出ることで体力的にすごい疲弊するっていう子がいるのも分かるには分かるんだけど、でもやっぱりこういうふうに1年でめちゃくちゃ舞台に出れるっていうこともさ、これからはなかなか時間がかかるだろうから、一本一本で新しい何かを見つけて欲しいな。

言っちゃえば惰性で行くっていうのも出来ちゃうと思うんだよね、役によっては。でもやっぱりせっかく出るんだったら、何か自分で見つけて、セリフが少ない役だったとしても、見てる中で見つけられることも俺はあったから、本当に貴重な一本だと思って毎公演毎稽古挑んでほしいなっていうのは思います。

 

中川

私も感謝を。本当にありがとうございます。

今野君も言ってたように、毎公演大事にっていうのはすごい思いますし、芝居していく上で自分がやろうとしてることと演出家さんがやろうとしてることが別の時も多分あるとは思うんですけど、そういう時に戦うっていうのはやっぱりすごい大事だと思って、私もできてないんですけど……最近すごいおとなしいって言われるのが私も悔しいなって思ってて。

 

でも上の世代の人たちが今のこの時代に若者だったら同じようになってると思うけどね。

 

一同

(笑)

 

ーー時代の潮流は間違いなくありますよね。

 

俺らが1960年代生きてたらちゃんと学生運動やってた(笑)

 

今野

やってそう!大道は少なくともやってる(笑)

 

火炎瓶投げまくってる(笑)

 

今野

あ、でも逆かもよ、大道もしかしたら。「学生運動やってる奴なんてクソだ」って(笑)

 

一同

(笑)

 

ーーちょっと話戻します(笑)

 

中川

今はすごい研究所に守られてる状態で芝居をしてるからなんとかなってるかもしれないけど、もし座員になるとか、外でフリーとか事務所に入ってやるとか、そういうことになった時のためにも、自分の意見を持って自立するっていうのはすごい大事と思っていて、そこを大切に芝居をしていったらいいんじゃないかなって思いました。

 

池田

まずはありがとうございます。

まずはありがとうございます。

私のみんなの印象は、めちゃくちゃ真面目ですごいしっかりしてて、おとなしいけどユーモアも持ってるっていう感じで、人間が出来た人が多いなっていうイメージ。だからこそたぶん理不尽なこと言ってくる人っているから、何か言われても言い返しちゃえって思う。

自分ができなかったことを言うのはアレだけど、何を言われても、いい意味での反抗心を持っててほしいなって思います。


ーーありがとうございました。


聞き手・文字起こし:研修科メディア係

写真:桜田祥太朗

記事編成:室園元

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