【稽古見学2日目 ——4月2日 読み合わせ】
(↑読み合わせ稽古の前の様子。この日にはもう本番で劇場として使用するモリヤビル1階での稽古となっていました。)
この日もまだまだ読み合わせの真っ最中。
「文学座は言葉を大切にする劇団だ」というのは内外からよく耳にする言葉ですが、鵜澤さんの稽古場では特に「言葉」の届け方に神経を行き届かせるよう指導されます。
研修科生たちも相手役との掛け合いを大切にしながら読み進めていきます。が、シンプルなことのようでも、なかなか簡単にはいきません。
最初は穏やかだった読み合わせもどんどんヒートアップしていき、「もっと語尾を(相手に)かけろ!」「(台詞の音が)上がっていかないんだけど!」と台詞に対する鵜澤さんの怒号が飛び始めます。
「(ついに鵜澤さんの本領発揮か…)」という空気が研修科生の間に流れ始めていたときでした。
突然、台詞を読んでいた1年・田村真央が涙を流し始めたのです。
(↑最年少・19歳の田村。「(鵜澤さんからの)圧がすごかった」とのこと。)
シン、と空気が凍ります。
稽古場で泣く、というのは結構な事件です。泣いてどうにかなるもんでもなし、しかも稽古が止まってしまうので、「おいおい…」という空気が流れてしまうのも無理ありません。
「何泣いてるんだよ」と鵜澤さん。
更に凍る空気。そこに田村、
「こ、怖くて…」
という一言。
こ わ く て!!!!!!
19歳のあまりにも素直な言葉に、研修科生一同大爆笑。これには流石の鵜澤さんも苦笑い。張り詰めていた空気が一瞬でほぐれました。田村、つよい。
本科の発表会『女の一生』ですでに鵜澤さんの稽古場を経験していたものの、あらためてその厳しさを実感してしまったという田村。
鵜澤さんが穏やかに声をかけます。
「叩けば打ち返してくると思っているから、言ってんだよ。」
(↑休み時間にシーンについて話す2年・阿部大介と張平。上手くいかなくても、話し合いを重ねて次の稽古に挑みます。)
鵜澤さんの強い言葉の裏には、いつでも私たちに対する期待や愛がこめられています。
無駄に怒鳴ったりすることは絶対になく、「何か」があるから言うのです。そして、いくら失敗しても諦めずに何度でも指摘してくださる。そうやって受け止めてくださる鵜澤さんがいるからこそ、私たちも挑戦し続けることができるのだと思います。
今回はじめて稽古を外から眺めてみて、鵜澤さんの稽古場にはたくさんの愛が詰まっているんだなぁと感じました。
本番まであと1か月半。まだ作品の輪郭ははっきりしていませんが、稽古場の雰囲気は明るくも適度な緊張感を保っていて、今回も本番が楽しみになるばかりでした。
【稽古見学5日目 ——4月15日 立ち稽古2日目】
この日はモリヤビル1階の本舞台となる空間で、立ち稽古が行われていました。
台本を離して2日目。まだまだ台詞が怪しい人が多くいて、プロンプター(役者が台詞を忘れたり間違えたりしたときに台詞を投げてくれる人)が大活躍しています。
(↑プロンプ用の台本。シーンに出ていない役者がプロンプターをします。)
この日見学したのは、あるシーンの初めての立ち稽古。比較的大人数が舞台上に出る元気な場面です。
まだ演出が入っていない分、役者各々が自由に自分のプランを舞台上でぶつけていきます。挑戦的な演技に時折笑いも起き、和やかな空気を感じました。
一方で、まだ何をどうすればいいか・自分がどうしたいのかがわからず、戸惑いながら演技をする研修科生も見受けられます。自分がやりたいと思ったことを積極的に試す人、迷いながら自分にとっての正解を探していく人……。
どちらのタイプの研修科生にも、鵜澤さんがつじつまの合っていないところに演出をつけることで、次々と場面が整理されていきます。
そんな中、休憩時間にふと目についた2人組。
2年・染谷知里と1年・松浦慎太郎。
染谷さんが松浦に話しかけに行ったかと思うと、二人でくねくねと謎の動きをし始めました。
(↑1年・松浦と2年・染谷。これはとある作業中の二人。松浦は「この公演で裁縫のスキルがつきそう」とこぼしていました。)
くねくねくねくね…
え、わからないわからない。
なんの空間なのここは。
突っ込みたくてしょうがない、けれど本人たちは至極楽しそうなので何も言えない私。
実は今回は、1・2年生が一緒に挑む初めての発表会。出会って間もない研修科生たちが友人役や恋人役を演じなければなりません。
まだしゃべったこともない上級生・下級生もいるなかで、いかにコミュニケーションを取ってより良いシーンづくりに発展させていくか、ということが大きな課題となってきます。
謎の動きは、お二人にとってはおそらく、そのためのコミュニケーション手段の一つ。
「ホントかよ!」と思いながらも、不器用なお二人の様子が、失礼ながらほほえましくてしょうがありませんでした。
他の研修科生たちも、各々様々な方法でシーンを深めていっているはずです。彼らの初めての共同作業(?)をぜひお見逃しなく!
本番まであと4日。
現在は毎日両チームの通し稽古を行っており、発表会にかける出演者のエネルギーは日に日に高まっています。
残り短い稽古期間ではありますが、研修科生一同より良い作品作りを目指して、各々尽力いたします!
本番をお楽しみに!!
※2018年度文学座附属演劇研究所研修科第一回発表会『これは白い山でなく』
全ステージ予約完売となりました。たくさんのご予約ありがとうございます。
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