卒業インタビュー『三文オペラ』に向けて#1

今回は卒業発表会を間近に控えた研修科⼆年⽣(61 期)のインタビュー第 1 弾です。
「メッキース(A)役、秋保達也」「ブラウン役、⼭下瑛司」「ピーチャム夫⼈(A)役、⻑野ありさ」「ルーシー(B)役、野村珠々」にお話を伺いました。

(上段左:秋保達也、上段右:山下瑛司、下段左:野村珠々、下段右:長野ありさ


①⾃⾝の役について

―卒業発表会『三⽂オペラ』の作品や⾃⾝の役についての印象を教えて下さい。


秋保:メッキースは俺が今までやってきたお芝居や考えを覆さないと⾔えない台詞がいっぱいあって「ハニー」とか⾔うのが⿃肌⽴つぐらい恥ずかしい…


⼀同:(笑い)


秋保:でもメッキースは話の軸としてやっていかなきゃいけないので、ひとりひとりへの関係性をしっかりしていきたい。あと歌が盛り込んでくるのをごく⾃然に出来るように、歌わされてるのではなく「こっちが歌ってやるぜ!」くらいの気持ちでこれからの稽古もやっていきたいです。

秋保達也


⼭下:ブラウンは 2 つの側⾯があると思っています。まず警視総監の顔があるので最初は真⾯⽬なイメージが先⾏していたけど、ロンドンの⼤悪党であるドスのメッキースと親友という関係で、実際に裏取引とかして Win-Win な関係を持っているので、ある意味腐敗しているという⾒え⽅もあると思うのですけど、メッキースとかピーチャムの事もある種必要悪みたいな考えで割り切っているのかなと思っています。実際メッキースがやっている事は犯罪だけど、そういう⼈間を取り締まっていてもキリが無いし殺⼈犯逮捕に協⼒してくれるし、そういう存在はしょうがないのかなと割り切って、悪党を利⽤してでも公共秩序を維持する考えを持っている。警視総監だからといって絶対に犯罪を犯してはいけないという理想を重視するのではなく、もっと実際家というか現実社会はうまくいかないし⽢くない。だからピーチャムとかメッキースみたいな⼈間がいないと、世の中っていうのは平穏に暮らせないという考えを持っている⼈間にしていきたいと思っています。あと僕はシングルキャストなので、2 ⼈のメッキースと 2 ⼈のピーチャムと絡めるのが卒業発表会という意味でも嬉しいです。 


⻑野:今回ピーチャム夫⼈をやって思ったのですが、最初読んだイメージが『レ・ミゼラブル』のマダム・テナルディエの感じだと思ったんです。でも⻄本さんの解釈とか聞くとただ娘の事を⼼配している優しいお⺟さんの雰囲気な感じなのかなと。ピーチャム夫⼈の⾔ってる⾔葉と気持ちが違いすぎて、正直私はまだ整理がついてなくて。でもメッキースもブラウンもピーチャムも頭の回転が速いし場を動かしてる感じだけど、実は動かしているのはピーチャム夫⼈なんじゃないかな?と思ってて、結局メッキースの⾏動も当ててるし。


秋保:なんでわかるんだろうね?


⼭下:絶妙なアシストしてるよね


⼀同:(笑い)


⻑野:本当そうだよね(笑)。だからそういうピーチャム夫⼈を私なりに頑張って演じられたらなと思っております。


野村:私はルーシーのようにひとりの好きな男を他の⼥の⼦と取り合って、勝ち取るために どんな⾔葉だって浴びせるような喧嘩は実際にはしたことがなくてですね。


⼀同:(笑い)


野村:意外かもしれないけどしたことなくてですね(笑)。なので、感覚がまだよくわからない。いろんな⾔葉をポリーに対して⾔っているのが今のところまだ腑に落ちてない感じですけど、⻄本さんと話す中でルーシー⾃⾝も本当は争いたくないのかなと思ってて。⾃分の⼿に⼊れたい好きな男がいてたまたまそれにライバルがいたから戦わざるを得なくなっただけであって、⻄本さん曰く本当は⾃⼰肯定感低い⼥の⼦なんじゃないかというのを聞いて。私⾃⾝も⾃⼰肯定感低いし、超平和主義者なんでそこでちょっとだけルーシーに対して親近感を持って重なるところあるなと思った。それを頼りにルーシーをわかり合えたらいいなと思ってます。


② ⽂学座との出会い

―⽂学座を選んだ理由について教えて下さい。


野村:⼩学校の頃から、舞台に⽴つとかそういう習い事をやってて、⾼校とかもそういう学校で演劇やりながら⾃分も外部で劇団⼊ってというのを⼤学⽣まで結構やってて。だからもうなんか舞台に⽴つことが当たり前みたいな感じになってた。なおかつ⽬の前の⽬標、なんか「この公演に出る」とか「発表会がある」っていうのが常にあって。ただただそれを⽬標にひたすらやってて。だからすごい「今を⽣きてる」みたいな感じでこの数⼗年⽣きてます。でも⼤学卒業のときにちょうどコロナが流⾏って。⾃分が⽬標にしてたちょっと⼤きめの舞台に出演する予定だったんですけど、それも中⽌になっちゃって。だからなんかもう⽬標がないっていうか、廃⼈みたいな⽇々を過ごしていて。その中で⾃分の恩師、というか習い事の先⽣に「珠々ちゃん、⽂学座すごいあってるよ」って⾔ってもらって。でも私⼤阪出⾝で⼤阪に住んでたんで「ブンガクザ…?」みたいな感じだったんですけど。でも先がもう⾒えないってなったときに、その⾔葉だけを頼りにちょっと受けてみようかなっていう気持ちがちょっと芽⽣えて。ただ、お恥ずかしながら⽂学座の芝居を⾒たことがなかったんで、配信で『五⼗四の瞳』を観て。それで主演の松岡依都美さんはじめ役者の⽅々がなんかもう「すげぇ …」っていうか、「この⼈たちが喋っている台詞というか⾔葉に⼀切嘘がないな」って思って。「うわぁ、ちょっとじゃあちゃんとここでお芝居学んでみたいな」って思って、しかももうそこしかないって思ったんで、藁にもすがる思いで受けたっていうのがきっかけです。

野村珠々


⻑野: 私もちっちゃい頃からダンスをすごいやってて、まぁ「ミュージカルやりたいな」、「ミュージカルいいな」って思ったら「なんかちょっとミュージカル違うな」ってなって。


61 期⼀同:なんで(笑)


⻑野:なんか、「急になんで歌い出すんだろう?」みたいになっちゃって。まぁでも⽇本のミュージカルを観てそう思っただけで、ブロードウェイとかを観ると、すごいナチュラルだから、「あぁこういうことか」ってなるんだけど。そっちに⾏く勇気っていうか、そっちはやっぱエンタメで楽しむ⽅が好きだから。それでお芝居やりたいってなって。 きっかけはなんか、劇団☆新感線の『髑髏城の七⼈』を観て、⼩栗旬さんがやってたやつ。それで初めてストレートプレイを観て。そのときに「おもろっ」ってなって。そっから⾊々ワークショップとか受け始めて。でもやっぱり武器がないと。役者さんとして⾷べていきたいから。⾃分の武器増やすために⼤学の時に歌を⼤阪に習いに⾏って。

でもやっぱりそういうスクールにくる⼦ってミュージカルやりたい⼦がほぼだから、「なんかちょっと違うな」と思いつつ、でもまぁその先⽣のとこにずっと習いに⾏ってたら、たまたまそこの⽣徒さんが⽂学座に⼊って、それでなんか「お芝居したいんだったら⽂学座がいいよ」ってなって、今に⾄るという感じです。


⼭下:僕も結構のむさん(野村珠々)とダブる部分があるのかな。僕⼤学⼊るまで演劇とか全然やってなくて。でもう⼤学⽣になって、ちょっとまぁ⾼校⽣活があんま楽しくなくて…


61 期⼀同:なにがあったの(笑)


⼭下: まぁまぁそこはあんま関係ないんですけど(笑)。で、まぁ⼤学デビューみたいな感じで、 ⼤学からはこう、失われた⻘春を…


秋保:茶髪にしたり?


⼭下: そう、茶髪にしたり…まぁちょっと控えめの茶髪だったけど。そういうことして、キラキラした⼤学⽣になりたいなぁみたいな。


野村:あぁ、願望?(笑)


⻑野:実⾏はしてないんだ。


⼭下:いや、それで軽⾳サークルの⼈とかキラキラしてるイメージがあったから、軽⾳サークルに⼊ろうと思って。あと『セッション』っていう映画を観て、「ジャズドラムかっこいい」って思ったからジャズサークルに⾏ってみて、「僕、何も楽器弾けないんですけど、⼤丈夫ですか?」って聞いたら「全然、⼤丈夫!」って⾔ってくれたから⼊部したけど誰も教えてくれなくて…。


⼀同:(笑い)


⼭下:しかもまぁそこの⼈たち、周りはみんな上⼿に弾けるので、そういう会話で盛り上がってるし、これはまずいと思って「すいません、辞めます」って1⽇で辞めちゃいました。


⼀同:(笑い)


⼭下:で、あぁどうしよっかなって思ってたら、なんか⼤学の演劇部で「⼀緒に舞台を体験で作ってみましょう」みたいなのがあって。そこに参加してみたら、結構楽しいなってなって。そこから結局⼤学四年間ひたすら演劇ばっかやってしまって。気づいたときには、就職活動の時期で。なんかもう「⾃⼰ PR?志望動機?なんそれ」みたいな。インターンとかも全くやってなくて。なんか外の公演とか出てたりしてて。

だからもう「とりあえず、もう芝居で⾷っていこう!」って思って。でもなんか事務所的な何かを⾒つけないとまずいなってなったときに、何となくこう調べてるときに「⽂学座」っていうのが出てきて。で⽂学座の出⾝俳優を調べたら、内野聖陽さんとか横⽥栄司さんとかは知ってて。 内野さんはドラマの『JIN-仁-』で坂本⿓⾺役を⾒てて、めっちゃこの⼈⾯⽩いなぁと思ってて。あ、こういう⼈がこの劇団にいたんだって思ったら、何となく漠然とした考えで⾃分のなりたい役者像みたいなのができて、「⽂学座受けてみよう」って思いました。

山下瑛司


秋保:僕は昔から⾳楽が好きで、特に打楽器が好きでドラムをやりたかったの⼀番最初。並⾏して歌も好きだったんだけど。⺟親に「 ドラム買うのは近所迷惑だ」って⾔われて、Amazon で三万くらいの電⼦ドラムを買ったんだけどすぐ壊れて、どうしようと思って。


⻑野:そこで(⽂学座受けようと思った)?!


秋保::ちがうちがう、全部繋がってんの!(笑) 。いや、繋がるかわかんないんだけど…


⽊下(62 期):おいくつの時の話ですか?


 秋保:18?⾼校⽣くらい。どうしてもドラムやりたくて、なんかないかなと思って調べたら、ビートボックスと出会って。それのおかげで、⾼校⽣ラップ選⼿権の MC☆ニガリさんと GOMESS さんと⼀緒にライブをやったことがあって。そういうのがきっかけで、ステージに⽴って何かをやる、表現するっていうのがすっごい好きになって。基本その⼈たちってラップだから、なんかそういうのをやってたんだけど、歌もやりたいなっていうのがあって。 ⾼校三年になって、どうしようって思った時に、就職はもう全然頭になくて、何やりたいかなと思った時に、⾳楽の専⾨学校に⾏きたいなと思って。で、⾼校卒業と同時に⾳楽の専⾨に⾏ったんだけど、そこがなんか歌とダンスと演技も学べますよみたいな、でもメインは歌ですよみたいなとこに⼊って。⼊ったらとんでもなく歌うまい沖縄の⼦がいたの。俺、その⼈の歌聞いて、「あ、俺は歌は趣味でいいや」と思っちゃって諦めたいと思って。で、どうしようと思った時に、タレントコースっていう、なんか演劇のコースがあって。そっちに変えたいと思って、それをその講師の先⽣に相談したら、 もう「 前代未聞だ」って⾔われて「もうまた⾳楽やりたいとか⾔うなよ」って⾔われて。で、演劇メインのコースでやってたんだけど、 俺授業⾏ってなくて、⾃主退学しました。

卒業公演はなんか出れたんだけど「 授業⽇数⾜りないから卒業式には出れないよ」って⾔われて、⾃主退学みたいな形になって。で、その時やってた戯曲っていうのが、 講師の先⽣によるみんなへの当て書きなの。実際に起きてる⽇常とか、例えば俺と瑛司くんがこういう関係に普段⾒えるからそういう関係性で作る、みたいな当て書きが多くて。基本 10 分とか 15 分ぐらいのやつ。だから、シェイクスピアくらいしか戯曲知らなくて。演劇をやってるのに。で、そういうので学んで、⾃主退学をして。で、なんか最後のオーディションで、事務所さんが俺のこと取ってくれてちょっとやってたんだけど、なんかすぐ嫌になってやめて。ずっとバイトしてた。もう⼆⼗歳?ぐらいからずっとバイトしてて、何のために俺東京いるんだと思って。何やりたいかなって考えた時に、演劇やりたいと思って。で、 どうせやるなら、最⾼峰のところに⾏きたい。そこでダメだったら俺諦めれると思って。それで調べて、やっぱ⽂学座とか⺠藝さんとか円とか、いろんなのが出てきて。⾊々調べていくうちに、「⽂学座はセリフをすごく⼤事にします」みたいなのが書いてて、そういうのとかもやっぱ専⾨学校の時聞いたこともなくて。そういうところに⾏ってみたいなと思って俺は⽂学座を選んだっていう感じですかね。


③三年間の思い出や印象に残っている事を教えてください。


秋保:『 ⼥の⼀⽣』。中村彰男さん。あの⽅の演出を受けて、演劇の根本が変わって。「相⼿とやる」「その場にいる」とか。何⾔ってんだと最初思ってたんだけど。あ、こういうことかっていうのが⽇々⾊々研修科に上がって⾊んな戯曲やっていく毎に分かってきて、だからどの戯曲やっても俺の頭の中に中村彰男さんが出てくんの。召喚されて。


⼭下:ちっちゃい彰男さんね。


秋保:「 居れないね」って⾔ってくるみたいな。あと、せっかく卒業公演で⻄本さんなんで、本科の卒業公演も⻄本さんだったからすごい思い⼊れがあって。俺の勝⼿な印象だけど、⻄本さんはすごく役者の俺らの意⾒を⼤事にしてくれる。ずっと印象に残ってるのが、本科の時に、『お気に召すまま』やってたんだけど、シェイクスピアの。「ここの部分が分からなくて、こうだと思うんですけど」っていうのを⻄本さんに相談しに⾏くと、真っ直ぐ⽬を⾒てずっとこううなずいてくれて。本科の俺に対して、⻄本さんがこんなに話聞いてくれるって嬉しくて。こんなに⾃分がやりたいこととか、聞いてくれて。しかも、もともとカットされたセリフを、「ここはこういうことがあるから、あったほうがいいです」みたいな話したら、それが復活したりとかして。


61 期⼀同:へー。


秋保:あったじゃん。覚えてないの?!


⻑野:全く覚えてない。


⼀同:(笑い)


秋保:あんたのせいでセリフが増えたよとか⾔われたよ(笑)


⻑野:あ、ほんと?!ごめんね(笑)


秋保:ていうことがあったんだけど、すごい話を聞いてくれるっていうことが思い出に残ってて。研修科上がった時に、もう⼀回やりたいって思ってて。まさか卒公をやれるとは本当に思ってなかったから。やっぱ今まだ⽴ち稽古始まったばかりで⾊々あれだけど。でも卒業公演だし、⾃分たちが何をやりたいかを提⽰したい。やっぱそこが⼀番⼤きいかな。⾃分達が何をこうやりたいか、ここはこうだと思うとかを、ちゃんと提⽰できる役者に俺はなりたいと思ってる。最後の卒業公演の作品なんで、皆で⼒を合わせて、⼀年⽣のお⼒もお借りして、⼀⼈⼀⼈が輝ける舞台にしたいなと思ってます。


⼭下:なるほどね、抱負も。


秋保:そうそう。抱負も込みで⾔ったから。


⼭下:ありがとう。


⼀同:(笑い)


⼭下:僕が印象に残っているのは、良くないことなんだけど舞台上でハプニングに何度か居合わせたことですね。そういうハラハラする瞬間こそ「演劇してる」って感じて、あとあと忘れられない思い出になるというか。


⼀同:あー。


⼭下:なんとなく分かると思うんだけど、「うわ、やべっ」みたいな。例えば、前年度の卒業発表会『三⼈姉妹』で同期の肥⽥野君が、良い⾳がするこまをプレゼントするシーンがあって、ピュッて回してポーって良い⾳がするんだけど、それまで⼀回もミスしたことないのに本番で初めて回らなくて。


62 期⼀同:え―!


⼭下:回らないことにはその先に進めない。で、めっちゃ慌てて、「あ、おかしいな」とか⾔ってやるんだけど、回らないみたいな。俺がその肥⽥野君のフェドーチクと⼀番の友達みたいな役だったんすけど。「おーい、何やってんだよ」とか⾔って。


⼀同:(笑い)


⼭下:地獄のような時間稼ぎを。「すごい、ご馳⾛ですね」「おー、おいしそうだな」「こいつ練習してきたんすけどね」とか⾔って。ずーっと時間稼ぎをして、何とか回ったんですけど。


秋保:ちなみにそん時、俺はソリョーヌイだったから、睨みつけるしかなかった。


⼭下:役的にね。


秋保:そう、役的に、助けたいんだけど、助けれる役じゃないからさ。頑張れ、頑張れって思いながら、ずっと睨むことしかできなくて。


⼭下:あともう⼀個。『ヴィヨンの妻』(2023 年度第⼀回研修科発表会)の時に、久⽶がナイフを僕に向けるっていう。簡単に⾔うと、⾦を盗んだ男(久⽶)で、僕がその盗まれた料理屋の亭主で、ちょっとヒートアップして、「ちょっとあんたどこ⾏くんだ」みたいな。「あんた、⾦返してないだろ」みたいな感じで僕が⽌めたら、もみくちゃの状態でいきなり久⽶が刃物出して、「離せ、刺すぞ」って⾔って、バァーって逃げていくっていうシーンなんですけど。本番で刃物がどっかに吹っ⾶んでいった。で、久⽶もそれがどこに⾏ったか分かんないっぽくて。謎にもみくちゃに、こう、おーおーってなった後に、お互いに⽬が合って、ダッシュで逃げるっていう。


⼀同:(笑い)


⼭下:しかもその後に、「あんな態度に出るなんて、刺すぞだなんて」みたいな僕のセリフもあったんですけど、それも変えないといけないみたいな。そういうのが思い出としてあるかな。


⻑野:私は、今年度⼀発⽬の鵜澤秀⾏さん演出で『⼥⼯哀史』やった時に、もうセリフの⾔い⽅についてすごく⾔われて。研修科に⼊ってからはセリフの⾳の事とか語尾の事とか⾔われなかったから、改めてリセットされた。で次に⼩林勝也さん演出でやって(『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』)。もうすごいことになっちゃって⼤変だった。なんか⾃⽴しなきゃって思って。今まですっごい⽢えてたなあって。だから⾃⽴してやるって思って。で3本⽬で、『ペンテコスト』やった時に、空気を回さないといけない役だったから、私がしっかりしないとダメだって思って。良い感じに発表会ごとに⾃分がステップアップしていった。結局⾃分の⾜で⽴っとかないと、やばってなったの。本科の時に⽐べたら、凄い思い出がある。演⽬に凄く助けられたなって。うわ、なんか凄い真⾯⽬な事⾔ってる。


長野ありさ


⼀同:(笑い)


野村:私も本科は常にがむしゃらやったし。研修科1年の時も、先輩の⾜引っ張らんようにみたいな感じでがむしゃらな感じで。研修科2年になって、⾃分がこの先演劇やるかどうかも分かんないし、なんか楽しくやろうみたいなマインドで。私は研修科2年⽬は『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』から出演だったんですけど。個⼈的に『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』と『ペンテコスト』が、⾃分が頂いた役的にも、凄い励まされたなっていう印象があって。『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』は夏⼦って役をもらったんですけど。他⼈から認められる、夏⼦の場合だと義理のお兄さんから認められることによって、⾃分の存在価値が初めて⽣まれるみたいな。呪縛みたいなものがあって。それが『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』のラストシーンで、⾊々経験していく中で解放されるっていうか、⾃分だけの道に進むみたいなのに、結構そん時の⾃分が励まされたっていうか。夏⼦、カッケーみたいな。他⼈からどう思われるっていうのを気にしすぎて、⾃由になれない事が本科から続いてたので。そこの⾯では、夏⼦のマインドに凄い助けられたなって。

で、『ペンテコスト』はイェドリコーヴァっていう、50歳の、⾃分の倍の年齢の役をもらって。稽古中に、祐⼦さんから、「この歳になると凄い気持ちが分かる」って⾔われて。でも私その半分しか⽣きてないから、分からへんなーって思いつつ。⾃分が想像できる範囲でイェドリコーヴァと向き合っていって。⾃分よりだいぶ年上の役をやることによって、今まではなんか歳とるの怖いし、永遠の⼆⼗代でいたいって感じだったんですけど。イェドリコーヴァをやって、なんか歳を重ねていくからこそ、出会える経験とか出会える感情とか感覚があるんだなって思うと、あーなんかまだまだ⼈⽣これからだし、歳を重ねていくのも悪くないなあっていう前向きなマインドになれて。で、これがですね、額縁に飾っておきたいぐらいなんですけど、本科の卒業式の時に⻄本さんに、「⾃分の知らない感情に出会う為に台本がある」っていう、有難いお⾔葉を頂戴しまして、。それが特に今年の『⾬の夏、三⼗⼈のジュリエットが還ってきた』と『ペンテコスト』で、その通りだなと思うことが結構あったので、今年の2作品が凄く印象に残ってます。


④最後に 62 期へメッセージをお願いします。


秋保:去年 60 期の先輩たちが、1 年⽣(61 期)はみんな個性的だみたいなこと⾔ってて。で⾔われてるこっちはどこが個性的なんですかって思ってたんだけど、今めっちゃ思う。1 年⽣本当に個性的!!


⼭下:1 ⼈ 1 ⼈違う。


⻑野:先輩達が⾔ってたことが分かるよね。


秋保:えって思うでしょ。来年同じこと思うから(笑)。あと、これからまた 1 年⽣が⼊ってきて⽴場が変わっていくと思うから、どんどん引っ張って研修科の⼤事にする部分は⼤事にして、こういうことをやったらいいんじゃないかなっていうのとかも、どんどん広げて、いろんなことに挑戦してほしいなっていうのがあって。やっぱりただ引き継ぐだけじゃつまんないしやりたいことあったら⾔ったもん勝ちだし、 それに対して動いてくれないんなら⾃分が動きゃいいしみたいな。そうやってどんどん積極的になってくれたらこっちとしてもみんな頑張ってるなと、お互いにまた励まされる部分があると思うから。楽しく頑張ってください。


野村:皆さんすごい、もう本科の時から誰が研修科に来てもおかしくないなってぐらいすごい⾯⽩い⼈たちばっかりで。⼀緒にお芝居が出来て楽しかったです。あとは、⼼⾝ともに健康っていうのが、本当に⼤事だと思うので。役者って演じてるのは⽣⾝の⾃分だから、例えばすっごい怒られたりした時に⽣⾝の⾃分が怒られてるのか役としての⾃分が怒られてるのか、すごい曖昧になって病みがちだし、私も結構それで病むんですけど、いや、違うよと。あくまで役が⾔われているのであって⾃分⾃⾝が怒られてるわけじゃないから、そこはへこたれなくて⼤丈夫なんだよっていうのをどっか⽚隅に置いといて (笑)。でもやっぱり⾃分を⼤切にできないと、他の⼈とかお客さんのことを⼤切にすることはできないと思うから、まずは⾃分が 1 番可愛いと思って、⾃分今⽇も⽣きてて偉い!!みたいなマインドで⽇々楽しく過ごしてください。


⻑野:頑張ってください!!(笑)。あと、真⾯⽬に⾔うと、もうこっち (舞台上)に⽴ったら演出家とか、そういう向こう側(客席)の⼈のことを気にせず、⾃分がやりたいものを持っていってそれで失敗してもいいからチャレンジして⾏って欲しいです。私がそれするまでにすごく時間がかかったので、皆んなももっともっと挑戦してくれるといいなと思います。やっぱりね、⾃分が盛り上がってないと観ている⼈はもうどんどん冷めきっちゃうんで。毎⽇を楽しめるように、みんないろんなものに挑戦したりとか、いろんなものを舞台上に持っていったりとかしたら、もっと楽しくなるんじゃないかなって思うので、頑張ってください。


⼭下:(芝居を)やめたくなる時もあると思うんです。⾃分の嫌な部分も⾒えてくるし。どうしても病んじゃうみたいな時ってあるかもしれないんですけど。マジで演出は敵だ!!!媚びへつらうな!


⼀同:逆説だ!(笑)(『俳優についての逆説』)


⼭下:あれぐらいのメンタルでやったほうがのびのびとやれると思いますっていうのと、あとはみんな思いやりを持ってね。これが 1 番です。


秋保:本当にそうだね。


野村:⼤事なことだよね。


⼭下:特に同期同⼠とかはね、きつい時とかもお互い背中を叩いて、「⼤丈夫だよ!!」って感じでやっていったら、来年の卒業公演はとても素晴らしいものになると思います。頑張ってください。


62 期⼀同:ありがとうございました!!!    



インタビュー:浴聖太

写真:木下綾夏

文字起こし:62期研修科

記事編成:浴聖太高澤知里

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