ー卒業を前に思うこと。そして、未来ー59期インタビュー#2

今回は卒業発表会を迎えられる2年生(59期)へのインタビュー第2弾!

作品と真摯に向き合っている様子や、研究所での思い出などを語っていただきました。

第2弾は、アンドレー役谷龍彦さん(B)、ナターシャ役畑中咲菜さん(B)、クルイギン役秋山将輝さん、ヴェルシーニン役久保田賢伸さん(A)、ソリョーヌイ役山田亮秀さんにお話を伺いました。


1.『三人姉妹』について


―『三人姉妹』の稽古が始まって1週間ほど経ちますが、作品について感じていることをお聞きしたいです。


畑中:お恥ずかしい話『三人姉妹』を初めて読んだんですけど、はじめ読んだときはほんとチンプンカンプンで。ストーリーはわかるんですけど、突拍子もない所から会話が始まったり、会話していたのに突然別の話題が入ってきたりしてよくわかんなかったです。でも、読んでいくうちに、これってこういう事なのかなみたいに、どんどんわかっていったのがすごく不思議な経験でした。そういう経験ってあんまりなくて、そういう意味ではすごいチェーホフに挑む現代の人たちの姿勢みたいのは、しみじみと体験しています。あと、チェーホフってすごい意地悪だなと思って(笑)。一幕はアンドレーとナターシャがキスして幕、そのあとの二幕はすぐその二人のシーン。しかも一幕から二年ぐらい経ってるシーンなんで、明らかに衣裳とか変わってるみたいな状態で。早着替えとかそういうのは生きてる人が頑張ってってことなんですかね……みたいな。戯曲だけど書き終わった時点で終わってない戯曲だなっていうか、舞台を立体的に立ち上げる所にすごく熱量を注がないといけないっていう事を、すごく上からの表現になるかもしれませんが、よくわかってらっしゃる劇作家のかただなと思って、やりごたえがあるなと思いました。

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秋山:俺はまだ作品の面白さがわかっていなくて。最初読んだときとか、「うるせぇ早くモスクワ行けよ」ってずっと思ってたし。

一同:(笑い)

秋山:「いつまでくっちゃべってんだお前ら!」みたいな。「とりあえず身一つでモスクワ行けバカ」みたいなそんな感じでした。けど、今稽古始める中で、ああここちょっと面白いんだとかいうポイントが表れてきているのは楽しみではあるので、そういうポイントをもっと見つけていけたらいいなって思います。


―演出の高橋さんも稽古でそういうポイントを見つけていってほしいとおっしゃっていましたね。ご自身の役について感じていることなどはありますか?


久保田:僕は、ヴェルシーニンみたいな男って居ないなって思いました。女の子と浮気とか不倫してるような男って、大体同じような浮気してそうな外見で浮気してそうな雰囲気があると思うんです。ヴェルシーニンみたいな、妻のことも子供のことも好きで、爽やかな男性なのに、爽やかに不倫しているっていう。そういう人は見たことがないので、是非見てみたいなと思いました。

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:俺は、最初配役された時は、本当に嫌でした。アンドレーはほんとうじうじしていて、行動できない言い訳ばかりのやつで。でも今は、行動できないのはなぜなのかっていう、その障害みたいなのを探している段階です。こういう障害があるからなかなか動けないっていうのを。多分、心の中は動いていると思うので、そういうところを表現できたらいいなと思います。

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畑中:ナターシャは、初めて読んだときは嫌な人じゃないけど、しゃべれば爆弾が落ちる人みたいな、動けば周りのみんなが不幸になる人みたいなイメージがありました。でも、彼女なりに多分正義があって、それを確実に遂行しているんだっていうのがわかってきて、すごく共感できる役だなって印象を今は受けています。彼女のバックボーンはほとんど描かれていないので、文献とか調べるのもすごい面白いです。全然まだまだなんですけど。あと、ナターシャに込められているチェーホフの想いじゃないですけど、なにかがあるのがすごい伝わってきて……。実際に読むまでは三姉妹の話だと思ってたんですよ。それが解説とか読んでいると、四人のインテリ女性とか書いてたりするのが意外で、ちょっと頑張らないとやばいかもじゃないけど。どの役もそうなんですけど、やりがいのある役になれて嬉しいなっていう気持ちです。

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山田:つくづく思うのは、あんまり人の嫌がることはやりたくないなと。最近は役作りのために、ずっと殺人鬼の生い立ちとか、そういうのばっかり見ていてあんまり楽しくないです。

久保田:ジョーカーとか?

山田:そんな感じ。


―少しやばい人ですもんね。


山田:そうですね。だからこれからあと1か月かと思ったらちょっとしんどいですね。

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秋山:クルイギンは嫁がいて、嫁が自分のこと好きじゃないとわかっているんだけど、自分に言い聞かせてるみたいな役で。本当に同情するし、かわいそうだなって思うし、ちょっとわかります彼の気持ちは。


2.演劇、文学座との出会い


―演劇を始めたきっかけと、文学座を選んだ理由をおしえてください。


久保田:僕は、正直言うと始めた理由は覚えてないです。中学生から事務所に入っていました。

畑中:自分から入ったの?

久保田:そうです。

畑中:演劇とかに興味があったの?

久保田:その時はあったのかもしれない。

畑中:あったのかもしれない(笑)

久保田:そのまま高校生までその事務所でやっていて、文学座に入りました。

畑中:なんで文学座に入ったの?

久保田:入った理由は、空気感?フィーリング?研究所の説明会に行ったときにここにしようと思い、受けちゃおうと思いました。


―どうして研究所の説明会に行こうと思ったんですか?


久保田:当時の事務所の偉い人と話している時に「大学入ると遊んじゃうんだよね」って言われて。言われた瞬間、「あ、俺絶対それだな」と思って、それで大学行くのはやめようと思いました。それで、ネットで色々調べたら文学座が出てきて、サイトを見たら説明会があったので予約しました。

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:僕は、田舎でくすぶっている時に、なにか刺激が欲しいなって思って、地元(富山)で有名な俳優さんで西村まさ彦さんっていう方がいらっしゃって、その方が監督するラジオドラマのオーディションがあったので受けてみたら、受かりました。

それでやってみたらすごい面白くて、こんな世界があったんだ!って感じました。その時もう30歳だったんですけど、この道良いなと思って、ネットで調べたら有名な文学座が年齢制限もなく試験を受けれるとなっていたので受けました。

(谷龍彦)

畑中:私、小さい頃まったく人と喋れなくて。

秋山:噓でしょ!?(笑)

畑中:ほんとなの!本当に大人はもちろんだけど、同年代の幼稚園の子とかに話しかけられても泣いちゃうみたいな感じでした。お花とか人形とかと話してたらしいの(笑)元々喋り始めるのも遅かったみたいで、言葉の教室に通わせた方がいいかもしれないですって言われてたくらい、本当に喋れなかったらしいです。親的にも、これから人と話すってなった時に、ちょっとこの子やばいんじゃないかって思ったみたいです。それで親が調べて、関西である事務所を見つけてそこに入れてもらいました。初めてマネージャーさんに会った時に、「人に会ったら挨拶っていうのをするんだよ」ってところから全部教えてもらいました。そこで高校二年生くらいまでずっとやってました。その時にお仕事で、文学座の地域拠点契約になっている八尾市文化会館プリズムホールが制作する演劇に子役で出演させてもらうことになって、高橋正徳さんなど文学座の方々に出会って、衝撃的というか、舞台ってすごい面白いと思って。そこから文学座を志すようになって、大学を卒業したら絶対入ろうと決めて、4年制大学を卒業してから文学座の試験を受けました。

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山田:僕は、高校演劇が始まりです。高校の始めは中学でやっていた剣道部に入っていたんですけど、剣道に飽きてきて。そのタイミングで文化祭がありまして、僕の行っていた富山中部高校の文化祭って文化部の発表だけなんです。だから、吹奏楽部とか書道部とか演劇部とかが、ただ順番に発表していくみたいな感じでした。だから僕高校で青春とかあんまり知らないんですけど。

一同:(笑い)

山田:そこで演劇部の発表を、クラスメイトが出ていたから見てみたら、そこでやっていた柳沢慎吾さんの『一人甲子園』がめちゃくちゃ面白かったんです。うわっおもろいなと思いながら次の日には剣道部を辞めていました。


―大学にも通われていたと聞きましたが、大学はいかがでしたか?


山田:大学は東京大学ってところに通っていたんです。大学3年の頃ってみんな就活とかを始める時期なので僕も就活しようと思ったんですけど、別にやりたい事もないなと思いながら過ごしていて。高校時代演劇が楽しかったからやってみるかと思って、大学3年生で文学座に応募して、大学4年生から本科昼間部、みたいな感じでした。

秋山:大学と両立してたの?

山田:そう。

畑中:テストとか大丈夫だったの?

山田:むしろテストしかなかったんだよね。出席は取らないし、教授の授業内容を書き起こした講義録が出回っていたから、それを見てテスト前に勉強をして、本科の授業は行きつつ、テストの時だけに大学行くっていう。

秋山:本科の授業は全然休んでなかったんだね。

山田:授業で休んだのは一コマだけでした。

(山田亮秀)

秋山:僕は中高一貫の学校に通っていて、陸上部に入ってたんですけど、少し変わった学校だったので、文化祭の出し物でクラス全員で演劇を発表するというものがあったんです。ドラマの脚本とかを持ってきてリメイクしたりしてみんなで上演するみたいな。その辺の居酒屋からビールケース借りてきて、その上にベニヤ板を乗せたりして舞台を作ったり、全部自分たちで作るっていう感じで。その頃は全く演劇とか興味なかったんですけど、数合わせのような形で端役に入れられてやってみたら、周りのみんなが勝手に面白がってくれて、そんなこともあるんだなと思いながら、中学2年生から高校3年生まで演劇をやっていました。共演者の女の子に好かれたいという理由で舞台に出たりもして、そうしたらどんどん楽しくなってきて。

畑中:しっかり動機が不純だね(笑)

一同:(笑い)

秋山:芝居の作り方とかも、堂本剛さんの『33分探偵』みたいな作品をやったときは、DVDを毎日何本も見て表情とか声色をモノマネするだけっていう方法でやってました。それとは別で、演劇をやってみたいなと思って、大学の演劇部入って小劇場とかもやったりしました。一時期芝居とどう関わっていこうかと悩んで、就職を考えた時期もありましたし、友達と劇団を立ち上げて一緒にやっていこうという話もありましたが、そのためには一度友達とは離れて、外部から別の言葉を吸収していく必要があるなと感じ、養成所に行こうと決めました。文学座とか、青年座とか、新国立劇場とかの養成所を一通り見て回る中で、一番初めに見たのが文学座で、応募したら受かりました。松田優作さんとかも好きだったから文学座に興味を持ったところもありましたね。


―今もその仲間は演劇を続けているんですか?


秋山:今もやってます。


―では、再集結の可能性も?


秋山:いずれあるかもしれないですね。どのみち何かやろうとは思ってます。

秋山将輝


3.研究所での思い出


―次に、本科と研修科の三年間で一番思い出深かったことはありますか?


秋山:喋れるやつと、喋れないやつがあるからな。

一同:(笑い)

久保田:まずアトリエ前で植田さんに怒られた話から……

秋山:これいいのかな(笑)本科の時、『わが町』(研究所本科第一回発表会)が終わった後に、当時はコロナじゃなかったから普通に、アトリエの前にテントがあって、そこでみんなで缶買ってきてお酒飲んで、音楽かけたりしてたんだよね。それを夜の12時くらいまでやってて……

畑中:そりゃおこられるだろ。

秋山:それで、中村彰男さんとか、坂口芳貞さんとかがたまたま帰ってきて「お前らそろそろ帰れよ」「はーい」みたいな感じで帰って。


―アトリエ前で飲むのは大丈夫だったんですか?


秋山:そこは大丈夫。そのまま徹夜したら楽しくなっちゃって、次の日もやろうぜってはしゃいでいたら、植田さんに「お前ら研修科じゃないんだからそういうのやめろ」って怒られたんです。研修科だったらいいの!?って思いました(笑)

畑中:研修科って、コロナになるまでは稽古終わった後みんなで飲んだりとかできたみたいなんです。だから、研修科用のお酒とかも元々置いてあって、座員さんが勝手に飲んじゃったことがあるって先輩から教えてもらいました(笑)

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畑中:私は、『家を出た』(2021年度研修科第一回発表会)の時に演出の鵜澤秀行さんの喜寿のお誕生日を出演者みんなでお祝いしたことです。コロナでいろいろはできなかったので、みんなでケーキとお花を用意してお祝いすることになって、私がお花を用意する担当になったんです。最寄りのお花屋さんで「喜寿のお祝いでお花を一輪とかで探してもらっていいですか?」ってお願いしたら「芍薬(シャクヤク)とかどうですか?喜寿のお祝いなら紫の芍薬がいいと思いますよ。」って言われて、ものすごくいいと思って紫の芍薬にしたんですけど。電車で稽古場に向かっている時に、鵜澤さんは役者さんで文学座の大先輩だし、「この花の意味は?」って聞かれたらどうしようと思って花言葉を調べてみたんです。“芍薬”って調べたら、謙虚とかの日本のおしとやかな感じの花言葉があったので、よかったと思ってスクロールしていったら、“絶対にあげてはいけない色の芍薬”ってサイトが出てきて、怖くなって見てみたら、紫の芍薬だけは花言葉が“憤怒”だったんです。鵜澤さんにぴったりだけどご本人には絶対に言わないで!!という出来事がありました。その節はすいませんでした……最後だから言います(笑)

(『家を出た』鵜澤さんのお誕生日をお祝いした時の様子)


―本科の時夜間部は仲悪かったと聞きましたが(笑)、どうでしたか?
(元昼間部:山田、元夜間部:秋山、畑中、久保田、谷)


:まあ、まあ、まあ……。

畑中:仲悪いっていうか、昼間部はすごい一体感があったみたいなんですよね。話し合いとか、アクションの授業の自主稽古とかをみんなでやろう!という感じが強かったみたいなんです。夜間部は、日中お仕事している人とか、稽古時間ギリギリとかに来る人とか、みんな忙しいのもあったのかもしれないですが、あんまりみんなで一緒にという感じはなかったです。それで主事補佐の三竿さんとか主事の植田さんに話し合いとかに、研修科でやっているミーティングじゃないけど、もう少し協力する意識を持った方がいいんじゃないかとアドバイスをいただいたこともありました。昼間部には昼間部の課題があったのかな?でも、夜間部も仲は悪くないよね?

:全然悪くないよ。


―昼間部はどうでしたか?


山田:昼間部はまぁ……よくある集団の構図じゃないですかね。

秋山:言い方!言い方絶対嫌なやつ!(笑)

山田:最初によくクラスを仕切るような人が牛耳って、そういうタイプじゃない人が付いていくみたいな。

畑中:よくないそんな言い方は(笑)だってさ、あれは仕切ってくれる人がいないとどうにも動かないからね。


―引っ張ってくれる人がいて、成り立ちますよね。


畑中:そうだよね。

山田渡辺拓弥とか、濱田聖とか。高橋大誠はそういうタイプではなかったけど、結構普通にガツンと意見を言うタイプでした。僕はずっと……僕最初の方とがってたんですよね。本科の最初の時期ってさ、研修科上がりたい!みたいな感じでちょっととがりたくならない?

畑中:わかる。緊張してるし、どういう人たちなんだろうみたいな警戒もあるよね。

山田:でも僕とがるの向いてないなとすぐに気づいたので、ずっと引っ込んでいました。僕はやっぱり隅っこでこじんまりしているのが一番いいなと思って、ずっと隅っこにいましたね。

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―谷さんはいかがですか?一番印象的だった人でも……


:それはやっぱり、高橋正徳さんかな。本科の卒業発表会で演出をしてくださったんですが、それまで本当にちょっとの役しかできなかったので、『わが町』(研究所本科第1回発表会)では墓堀りのジョー・スタッダード、『女の一生』(研究所本科第2回発表会)では井上という感じで……。

畑中:シーンが少ない役だったんだよね。

:そうそう、あのときは結構腐ってたね。

畑中:周りのみんなは谷君の井上すごい好きだったのに、谷君だけ腐ってたよね(笑)

:井上だけは嫌だった。

畑中:夜間部は演出が大滝寛さんだったんですけど、大滝さんも谷君は土の香りがするっておっしゃっていたと聞いたことがあって、たぶん大滝さん的にはドンピシャで井上は谷君だったんですけど、谷君は嫌だったという。どうしても台本を読んだときにこの役良いなと思う時があるから、そういう時にその役になれないと少し残念に思っちゃうよね、難しい。


―卒業発表会(59期本科卒業発表会『花火、舞い散る』)ではそうじゃなかったんですか?


:そうだね、やりたかった役でした。

畑中:卒業発表会では主役でシングルキャストだったの。山岡隆之介くんと谷くんで花火職人の親子の役だったんだけど、2人ともシングルキャストで頑張ってました。


4.将来について


―次に、将来目指している役者像や目標などありましたら、おしえてください。


:将来って言われてもな、本当に見えないな。

畑中:今まだみんな迷ってる感じだよね。私は、ざっくりとした目標みたいなのしかないです。大それた話みたいになってすごい嫌なんですけど、夢はでっかくということで話します。少し前にちょっとご縁があって、「歌舞伎の見方」を観劇しました。歌舞伎役者の方が、歌舞伎がより面白く観られるようなお話をしてくれた後に、実際に1つ演目を観るというもので、それがすごい面白かったんです。歌舞伎って高尚というか、昔の言葉でよくわからないんじゃないかと思っていたんですが、少し江戸っ子っぽい話し方というか、初めての人でも聞き取れるものもあるとか、舞台装置の、例えば花道にあるすっぽんから出てくる役者さんには、人間以外の妖怪とか幽霊とか動物を表す意味があるんですよとかいう事を「歌舞伎の見方」で教えてもらいました。それを観て、今まで以上に歌舞伎に親近感を持つようになりました。歌舞伎とか演劇、新劇もそうですけど、まだ観たことがない人が観に来てくださったときに、そこでどれだけその人の心を掴めるかってすごく大切だなって思ったんです。役者って食べていけないじゃないですか、どれだけかっこいいこと言っても、食べていけない人が多数というのが現状で、私はそれが不満なんです(笑)それが不安で、不満です。だからどれだけお客さんに観てもらって、より興味を持ってもらうかということが今後私たちがプロの役者になった時にすごく大切な支えになるなぁって。例えば、バイトとかってすごいいい経験になるけど、でもその時間に台本読みたいなとか、セリフ覚えたいなとか、あの舞台観に行きたいなって思ったとして、でもみんなどこかで折り合いをつけてお金を稼がないといけないじゃない。それを演劇の業界でしっかり食べていけるようになれば、きっともっと日本にしかない素晴らしい演劇ができるんじゃないかなと思ったので、舞台業界が豊かになればいいなというのが一つ思ったことです。じゃあそこから自分がどう携わっていけるのかというのはまだ模索中です。今自分ができることは、目の前のことを一生懸命やること!将来、さっき言ったことを実現させるためには、まず役者として一つ一つのお芝居を丁寧にやっていくことによって、演劇業界とかに還元していきたいなと思っています。

畑中咲菜

:僕は、今後続けていけるかどうかはまだ全然わからないんですが、ちょうど一昨日、亀田佳明さんの舞台(シアター風姿花伝プロデュース『ダウト』)を観に行ったんですけど、亀田さんはやっぱりすごくて、亀田さんの言葉ってすごく入ってくるし、聞きたくなるんですよね。なんであんなことができるんだろうって思いますし、もし目指せるのであれば亀田さんのような俳優になれたら面白いだろうなと思います。

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久保田:僕は正直こうなりたいっていうのは無いですね。ただ目の前のことをやっていくスタイルなので。将来こういう感じになりたいというのは考えられないし、やりたい作品は今の所ないですね。


―俳優は続けたいですか?


久保田:それすらも考えてないです。1秒先しか見てないです。

秋山:かっこいいね(笑)

畑中:5秒先くらいは見といたほうがよくない?(笑)

久保田:いや、5秒から1分先しか……。目標は、常に目の前のことを遂行していくことですね。それって逃げじゃない?って言われたこともありますが、確かに言われてみればそうですけど、先のことを考えてたらやっていけないですよね。メンタル的にも体的にも、だから目の前のことをやるというスタイルです。

(久保田賢伸)

秋山:僕は役者ということに絞って言うと……僕が好きな、素敵だなと思うのは、その人自身が見える役者で、この人こういうことしてるんだ、こういう生き方なんだというのが見える人が好きです。自分に完全に役を寄せることはできないし、いい俳優はそのセンスがあると思うんですけど、結局やっぱ自分だなって思っていて、まず自分が楽しむことが第一だし、そのほうが魅力的な芝居ができるって思ってるので。魅力的な人間になりたいなっていうのが一番ですかね。あとは、演劇の面白さって、演劇一つ選ぶとすれば他の芸術と比べて良くも悪くも一人でできない、他人が必要な行為だと思うので、誰かと関わることの面白味だと思うんです。そういうのはある種希望だなと思うので、やっぱり演劇を続けるのであれば大切にしていきたいし、それは僕にも還ってくると思うので。自分が面白いなって思えることを続けていけたら幸福だなと思います。魅力的な人間になりたいというのが目標です!

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山田:僕は、4月から働きたいですね。『痕跡(あとあと)』(2021年度研修科第3回発表会)位から演劇が疲れちゃって……。役者じゃなくても、研究所の主事補佐とかやってみたいなと思っています。今主事の植田さんに談判してみてるという感じです。研究生の間は無理だからって言われてますが。俳優はやりたくないといえば、今はやりたくないんですが、周りのみんなが、俳優目指してキラキラしてるのを見るのは好きなので、主事補佐もいいなって、ポストが開けばの話なんですけどね。誰が決めるとかわからないですけどね。もし主事補佐になれたときは1年生の皆さんよろしくお願いします!

畑中:もう決まったみたいな(笑)でも、決まるといいね。

秋山:いろんな道があるよね。


5.60期へメッセージ


―最後に、60期へメッセージをお願いします!


秋山:さっきの話になるんだけど、結局最後は自分だから、楽しくやって自分を大事にして、自分の人生豊かであって……。演出家とかにもいろいろ言われると思うけど、結局最後に判断するのは自分だから、そこは自分として楽しんでやりたい事やってほしいなと、それが一番だと思います。僕もそうありたいと思うし、なのでそれで頑張ってください。

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久保田:やっぱり2年生になると、一気に空気感が変わる。最初僕1年生入るって忘れてて。

一同:(笑い)

久保田:集中講義で1年生が入るの忘れてて、始まる3分前とかに行ったらすごい数の人がいて「おはようございまーす!!」って(笑)ほんとに空気感が変わるから、そうするといろいろと変わってきちゃうので、調整しながら2年生の最後まで乗り切れるといいですよね。急に元気な感じでいっちゃうと2年生になってから保たなくなっちゃうので、最後まで保つように何となく調整しながら行くと最後まで乗り切れますよ。

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畑中:この1年間で思ったのが、憧れる人っているじゃないですか、役者でもモデルさんでも、身近な人でも。あんな人良いなって思ったりするけど、でも60期の人に出会ってみて、魅力って1種類じゃないなって思って、それぞれめっちゃいいところがあるし、逆にこれから頑張らないといけない目標も絶対あるから、とにかく自分のことをもっと愛してあげてほしいです。愛してないってことではないんですが、今たぶんあの子良いなとか、あんな風になれたらいいのにって不安に思う事っていっぱいあると思うんです。学びの場にいるからそれはそれで大切なことなんだけど。2年生になるから不安になることとかも、私はいっぱいあったので。でもさ、普通の大学生に見える子が実は何万人もフォロワーがいるSNSの主だったりするじゃない?それとか見てて魅力ってみんなそれぞれで、誰かがその魅力を探し求めてる可能性は大いにあるなって思って。なのに、勝手に自分が自分を過少評価しちゃってることってあるよなぁって思ったので、自分のいいとこも悪いとこも抱きしめてあげて、自分なりのペースでいいから頑張って一歩一歩確実に、役者とか以前に自分のことを好きでいられる人でいてくれたらうれしいなって思います。不安とかあってもそんなのいい!みんな素敵!とにかく楽しんでほしい。コロナがあった分来年はもっと充実した日々になることを大いに期待しております。マスクが取れる日を願って。

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:ベタだと思うんですけど、辛いこととかしんどいことはない人はないかもしれないけど、たぶん来る。そういう時が来ると思います。

秋山:予言みたい(笑)

:人生長く生きていればね(笑)その時倒れたとしても這い上がって、諦めないで、情熱を失わないっていうのが大事だなと思っていて、それで行動っていうのが大事だと思います。

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山田:僕は今あまり演劇ムードじゃないってさっき言ったと思うんですけど、2年生始まったころは演劇ムードだったんです。でも、いい役者になりたいとか、いい演技がしたいとか、そういうのはあまり思っていなくて、今も思ってないんですけど。でも、ただこの1年みんなといい思い出ができたらなって、そのモチベーションで過ごしてきたので、1年生に限らず、2年生も一緒に過ごしてきてくれてありがとう。僕はそんな感じですね……でも、僕コミュニケーションとるのうまくないので、もう少しみんなと話したかったなというのは本音でありますね。

秋山:まあ、これからまだ時間もあるし!


―ありがとうございました!

(インタビュー時の様子)


聞き手、文字起こし:研修科メディア係

写真:今野忠倫

記事構成:今野美彩貴

※このインタビューは12月10日に行いました。本記事はインタビューを元に再構成したものです。

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