今回は卒業発表会を間近に控えた研修科2年(60期)のインタビュー第1弾です。
「チェブティーキン役、比嘉崇貴」「トゥーゼンバフ役、水野創平」「イリーナ(A)役、今野美彩貴」「マーシャ(A)役、牧紅葉」にお話を伺いました。
① 『三人姉妹』について
―卒業公演『三人姉妹』、チェーホフ作品、またご自身の役の印象について教えて下さい。
水野
役はトゥーゼンバフです。去年(59期卒業発表会『三人姉妹』)はフェドーチクをやりました。出演時間はあまり多くなかったのですが、フェドーチクはイリーナに何かプレゼントを渡したりしていて、色々していて、イリーナに好意を持っているのが今回のトゥーゼンバフと共通しているので、なんかいいなと思いました。
―『三人姉妹』についてどのような印象がありますか?
水野
チェーホフについて調べたら、農奴のルーツがあり意外と庶民に近い目線で書かれてたのかなみたいなのをすごく感じていて。昔の作品をそういう目線で今回この作品をできるというのはすごい貴重だなと思います。
―トゥーゼンバフを演じる上で大事にしていることはありますか?
水野
大事にしていることは、僕今まで結構おじさんばっかりやってきてたんで、そっからいきなり若い役になって、ちょっと大変というか。
最後にこういう恋愛じゃないけど、こういう作品をできる研修所にいてよかったなと思います。
(水野創平)
―ありがとうございます。それでは今野さんお願いします。
今野
『三人姉妹』は全幕に、家族や兄弟の話で大きめの事件が起こるので、結構想像しやすい話で、すごい楽しんでます。今回初めて、読み稽古前にみんなで作品についての事前学習をして、勉強したことを発表したり、祐子さんからも情報を頂いたおかげで、読みの段階ですごい細かい部分まで想像できました。「凄いやりやすいな、セリフもはいりやすいな」と今は思ってやってます。
―イリーナ役についてお願いします。
今野
イリーナは末っ子じゃないですか、4兄弟の。あたし、3兄弟の真ん中でずっとお姉ちゃんをやってたんで、末っ子でいることへの違和感がすごいです。(笑)なんかこんなに自由でいていいのかなって言うのを考えちゃって。お姉ちゃんでいなきゃっていう意識を取り除く作業を今頑張ってます。でも、文学座にきてから同期に年上の人がいっぱい居たので、結構甘えさせてくれる環境にいたなって、イリーナを演じる上で助かってます(笑)
一同
(笑)
―ありがとうございます。では比嘉さんお願いします。
比嘉
セリフの中にある内面的なドラマみたいなのがすごい魅力的だと感じています。戯曲を読んだけだと、最初理解できないことが多いんですけど、演出の祐子さんと読み合わせをしていく中で、どんどん中身が膨らんでいって、誰でも共感できる内容っというか、人間味溢れる部分が沢山あって、そこがすごい魅力的だなと思います。
(役は)チェブティーキン。今回自分がやるチェブティーキンは、60歳近くで、今僕は23歳なんですけど、今までやってきた役も自分の年齢に近い事が多かったんです。だから今回みたいなおじいちゃんは初めてなので、おじいちゃんならではの悩みとか責任とか、そういうところを掘り下げたり、近付けたりしたらいいなと思います。
―チェブティーキンを演じる上でのこだわりは何ですか?
比嘉
変に年寄り演技をしないこと。それよりも周りとの関わりとか内面で起きてることをどう伝えるかってところです。
―ありがとうございます。それでは牧さんお願いします。
牧
普遍性みたいなところがあるからこそ、こうやって色んなところで上演されてきて、長い間愛されてきた戯曲なんだなと読んでて思うんですけど、最初読んだ時は何言っているのかよく分からなくて。でも今は、人間のドロドロしたところとか、残忍なところとか、時の残酷さとかがこの作品のテーマだと思ってて、そういう所に誰でも共感できるポイントがあるんだろうなと。
比嘉
絶対登場人物のどれかに共感できるよね。ほんとに色んな人に見てもらいたいというか。
水野
観る人の年代によっても感情移入できる役も変わると思うし、ほんとに面白いよね。
―マーシャについてお願いします。
牧
59期卒業発表会『三人姉妹』のマーシャ役の方2人がかっこよくて。マーシャって役自体も魅力的な役だけど、「え、私?」みたいな。恐れおののいて、どう作っていけばいいんだろうってすごい悩んでる。
(牧紅葉)
今野
去年の先輩たちはかっこいいっていうか。
比嘉
大人って感じだったよね。
牧
マーシャ像崩しちゃわないかなって。崩してくか(笑)
今野
崩していくか(笑)
比嘉
崩していこう(笑)
―楽しみにしています。
② 演劇との出会い、文学座との出会い
―では比嘉さんからお願いします。
比嘉
自分はお芝居始めたのが、そもそも舞台は関係なく声優なんですけど。昔、声優に憧れててワンピースのブルック!
一同
おー!!ヨホホホの!
比嘉
ヨホホホの!(笑)めちゃくちゃカッコよくて。それで声優目指し始めて、沖縄の専門学校通ってたんですよ。その専門学校に文学座のポスターがあって、卒業間近で進路どうしようかなと思った時に声優って道よりも舞台に魅力を感じて。で、文学座を調べてたら「言葉を大事にする」イメージがあって。それが何故か分からないけど自分の中で魅力的に思えて応募して運良く受かったという感じですね。
―声優の専門学校に通っていてなぜ舞台に魅力を感じたんですか?
比嘉
当時教えてくださっていた講師の方の劇団に結構お世話になっていて、舞台にたくさん触れて、色んなもの見せてもらって。それで、体を動かして何かを伝えるって言うのが、自分的には面白くて、舞台ならではの雰囲気ってあるじゃないですか。言語化するの難しいんですけど。講師の方の影響がすごい大きいと思う。
―今も連絡取っているんですか?
比嘉
取ってる取ってる!だから今回の卒業公演『三人姉妹』は呼ぼうと思ってる!
―沖縄から!?
比嘉
沖縄から!
一同
おー!!!
ーそれでは、次に今野さんお願いします。
今野
演劇との出会いは、元々アニメが好きで、中学生の頃、ワンピースを見ている時に、冒険したいと思って、どうやったら海賊になれるんだろうと最初は思って。
水野
なに、海賊目指してたの?
今野
海賊になりたかったの!(笑)「海賊王は1番自由な人がなる」ってルフィーが言ってて。素晴らしいと思って!「冒険したい!海賊になりたい!」と思って色々調べて。でも今の時代海賊は厳しいから、それを疑似体験できるのってなんだろう、「あ、声優さんだ。」てなったから、ひそかに声優について調べたりとか、色々準備をしたりして、中学の卒業式のお父さんお母さんに当てるお手紙に「私声優になります」って書いて渡したけど、幼少期からずっと私がパティシエ目指していたこともあって、考え直しなさいじゃないけど、その時は反対されました。このままじゃ説明しても本気だと伝わらないと思って、高校3年間でバイトして100万円貯めて、両親に渡して、札幌の専門学校に行かせてもらいました。その3年のバイトのおかげで本気だと言うことが伝わって、今はすごい応援してくれています。専門学校では声優コースに入ったんですけど、声優コースも、俳優コースもやる事はほとんど一緒という感じの学校で、そこで初めて舞台を体験したら、面白いって思って。で、進路決める時に、東京の姉妹校で芸能事務所のオーディションがあったんだけど、その中に文学座があって、「もし良かったら試験受けないかってお誘いが来てるよ」って言われて、専門卒業後直ぐにお仕事いただける自信もなく、まずお芝居勉強したいと思ったので受験してみたら、なんか受かっちゃって、そのまま文学座来ちゃった。
(今野美彩貴)
―ありがとうございます。それでは牧さん。
牧
演劇との出会いは、3歳の時におばあちゃんの出演してるオペラの舞台に子役として出させて貰ったのがきっかけで、3歳ながら覚えててその時の光景を。スポットライト浴びて、お客さんがこっち見ててアドレナリンが分泌された感じで興奮して。でもそれで役者目指そうと思ったわけじゃなくて、しばらく自然に夢中で植物博士とか樹木医になろうと思ってて。農業高校の林業科に進んで森林について勉強してたけど、勉強が追いつかなくなって、高校3年生の時に大学受験とか視野に入れて色々悩んでいた時に、担任の先生に呼び出されて、「お前多分大学受験も落ちるし、就職しても絶対続かないだろうから劇団受けろ」って言われて「えっ?!」みたいな。
一同
(笑)
牧
何もそんな事考えてなかったからびっくりしたんだけど、先生が資料用意してくれて「東京にはこういう劇団があってな」みたいな。全くその先生も知識とか演劇とか知らない先生だったのに調べてくれて。もらった資料の中で一番上にあったのが文学座だったみたいな。
一同
へぇー。
牧
で文学座を受けることになりました。
―ありがとうございます。それでは水野さん、お願いします。
水野
俺は両親が教師やってて、ずっと先生になろうと思って18歳なった時に、お父さんが倒れて。その時に何で教師やりたかったんだろうって思ったんです。なんかふわふわした夢だったなと。そっから大学は普通に教育大学入りました。お爺ちゃんと仲良かったんで、洋画観るのがすごく楽しくって、それで声優の養成所行って、その声優の先生に「お前は声優向いてない」って言われて。
一同
(笑)
水野
「君はシェイクスピアをやった方が良い」って、言われて「シェイクスピア?」みたいな。
東京に上京して、そこでも声優の養成所一年通ったんですけどまあ残れず、で小劇場まわりをするんです。その頃、実は友達が文学座の養成所に入ってて、その舞台観に行って、松本祐子さんの『夏の夜の夢』だったんだけど。「レベル高っけぇ」みたいな。感じになって、その記憶はずっと残ってたけど、小劇場まわりをずっとするんですね。3、4年やって、もっとちゃんとしなきゃいけないなってなった時に、先輩に旅公演に連れて行ってもらって。その時はスタッフをしてたんだけど、小学生が出ていく時に「えー、おじちゃん、何の役してたの?」とか、「あれ誰のお父さん?」みたいな(笑)
一同
(笑)
水野
そういう会話がすっごい心にきてしまって。演劇をしに東京に来たはずなのに、このままじゃまずいぞみたいになった時に、その昔観た友人の文学座の舞台を思い出して文学座受けましたね。
―ありがとうございました。
③ 3年間の思い出について。
比嘉
シーンズ(2021年度第2回研修科発表会『Scenes from the Big Picture』)
水野
シーンズ懐かしい。パブで飲むシーンがあって。
比嘉
何か擬似ビールみたいなやつ。パブ組はずっと飲んでたよね。
水野
ずっと飲んでずっと喋ってるから、話す内容がどんどん無くなっていって。
比嘉
前半と後半で分かれるんだけど、休憩を挟んでね。1幕終わった瞬間皆んなトイレ行くよね。
今野
ダァーッと(笑)
一同
(笑)
水野
本当に出さないとね。
今野
私、女性1人だったからすぐトイレ行けたけど男性陣結構いたから大変だろうなぁって。
水野
1公演2.5リットル飲んでた。
―ちなみにそのビールの材料は何なんですか?
比嘉
あれはレモンティーをすごい薄めて、泡の部分はバニラアイスをミキサーで泡立てて乗せるっていう。
今野
若干炭酸水入ってる。
比嘉
そうだった、泡を再現するために。
水野
初めねえ、リプトンで作ってくれた事があってめちゃくちゃ美味くて。こんなの全然いけるぜって思ってけど、途中から粉になったらもう全然飲めなくて。
―美味しくないんですか?
水野
もう全然全然。
一同
(笑)
―比嘉さんと牧さんは、本科『女の一生』二幕の栄二役とけい役で共演したということですが、その時の思い出はありますか?
牧
ああ、女の一生ね。
比嘉
けいと栄二で。
(比嘉崇貴)
―(たすきを引っ張り合う動作)
牧
綱、引っ張り合いあっちゃうやつね。
比嘉
めちゃくちゃ怒られだんだよね、演出の鵜澤秀行さんに。
牧
何かねえ、紐の引っ張り具合が悪いとか、櫛の落とし方が悪いとかねえ。
比嘉
鵜澤さんが「止めないから、全部通すから」って言って始まったのに、俺が一歩歩いた瞬間に「やり直し」って言われて。
一同
(笑)
牧
廊下をね。歩き方が悪いって。その開け方が悪いとか。
牧
みんなの前でね、本当さ数分もないくらいのシーンを延々に1時間くらいもさ何回も繰り返し「はい、もう一回」「はい、もう一回って」
比嘉
頭おかしくなりそう。
牧
頭おかしくなったよね。何がいけないのか分からないままずっとやってて。
水野
面白いなあ。
―皆さん、素敵な思い出話をありがどうございます
④ 将来の目標
水野
将来の目標ね、研修科一本目が『家を出た』だったんですけど、その公演は出ることが出来なくて悶々としている時に的早さんと西本さんが座員さんも参加してくださる勉強会を開いて下さって。一緒に読み合わせして頂いた時に、「うわぁ、マジすげぇな。」ってなって。その人たちと、共演したい。っていうのはあります。
文学座であってもいいし、文学座じゃなくてもいいと思うんですけど、自分もその人たちと同じ空間でガッツリ芝居出来たら、いいなみたいな。
あと、芝居で食っていく事です!
―はい!ありがとうございます。牧さんお願いします。
牧
将来の目標はね、観に行った劇場がいっぱいあるんだけど、それを役者として制覇したいなと思って。あと自分で舞台作りたいなっていうのが、ずっとあって。舞台美術とかにも興味があるから。なんかね、「五感で感じる芸術」みたいなのを作りたくって。いつかやりたいな、っていうのが将来の夢です。
―はい、それでは、今野さん。
今野
将来の目標は、自由に活動したいなっていうのがすごい今あって。
その時にやりたいって思ったお仕事を、できる資格を持っていたいっていうか。
その為には、多分、自分がやりたいって思った仕事以外の事もいっぱいやっていかないとその資格は得られないと思うから、その準備をしていきたいなっていうのが、今の目標ですね。
水野
現実的だね。
今野
今まで理想の「こうなりたい!」っていう目標の人がいた訳でもないし、ただ舞台に立ちたいし、声優のお仕事もしたいしっていうのだけだったけど、今は、自由にその時やりたい事をやれるようにしたいな。っていうのと、あと、外部の公演に出させてもらって、Twitterとか毎回観てくださるお客さんが付いてくれたりしたので、そういう人たちを大切にしたいなっていうのもあります。
―それでは、最後に。比嘉さん。
比嘉
今まで結構色んな人にお世話になって、もちろん家族とか、さっき言った恩師の人とか、すごい期待してくれてるので。その人たちの期待に応えられるよう、裏切らないよう、芝居を続けられたらなって。それが今んところ、将来の目標ですね。
⑤ 61期生へのメッセージお願いします。
水野
いやなんか、すごい独立してみんな頑張ってるよ、なんか…凄くない?
牧
言えること無いよね。ちゃんとしてるよ。
今野
去年の先輩の言葉を借りると…先輩たちが結構、「後悔がある」みたいな事を言ってて。発表会の時に、「演出家の人にもっと質問をしに行けば良かった」とか後悔がすごいあるっていうのを言ってて。そういう後悔の残らないように頑張ってねっていう感じの事を卒業の時に言って下さってて。
61期の人たちにも59期の先輩の言葉をそのままお渡しします。
―それでは、牧さん。
牧
怒られたくないからさ、怒られないようにするじゃん。でも、それが正義じゃないというかさ、演出家が全てじゃないんだなって言うのは今更だけどね、そう思っててさ。もっと、自分のやりたい事っていうのを大切にして向き合っていかないといけなかったんだなって思うんだけど。でもさ、怒られるとすごい凹むじゃん。
それに、対抗する精神っていうのが常に用意しておかなくちゃいけなくて。一番大切なのは、心の健康と身体の健康だなって思ったんで、心身共に健康に頑張って欲しいです。
―それでは、比嘉さん。
比嘉
自分は最初、61期と会った時は、すごい…怖かったんですよ。 怖くないっすか。こうやって、会うって。だけど、すごいホントにみんないい子たちで…ね。良くて、真面目で、面白くて、頼りがいがあって、(笑い)それが2年生になって、どう成長するんだろうなっていうのが、すごい楽しみです。
牧・今野
ほんとにね。
比嘉
来年のやる芝居もすごい楽しみ。ただ、さっきね、牧ちゃんも言ってくれたけど、自分もすごい色んな稽古場で怒られてきたから。ただ、ホントにメンタルは、自分優先というか。メンタル第一。頑張って乗り越えてください!
―ありがとうございます。それでは、最後に、締めくくりとして…水野さんから61期生へメッセージをお願いします。
水野
60期はすごい周りをみる人多いなって勝手に思ってて、芝居を合わせる感じが。まぁ、良きも悪きもなんだけど、してる気がしてて。逆に、多分61期はもっと個々が強いイメージがしてる。それはすごい素敵なことだから、それに加えて相手と一緒に作っていくっていう、純粋に演劇を楽しみたいのはずっと思ってて欲しいなって思います。
ーありがとうございました!
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